研究課題
本課題の最終年度は,CYANAプログラムの自動帰属と立体構造計算の改良に成功し,細胞内蛋白質,創薬の開発に重要な蛋白質-リガンド複合体,蛋白質のダイナミクス解析など,複数の試料に応用し,新たな知見を得ることに成功した.新規に改良を加えたNOE自動解析法と立体構造計算手法の開発は,J. Biomol. NMR 62, 453-471 (2015)に報告している.また,ベイズ推定を立体構造計算に応用した手法を,J. Phys Conf. Ser. 699, 012005 (2016)に報告した.本手法は,NOEクロスピークの自動解析を実行しながら,水を陰に考慮した物理ポテンシャルから得られる事前確率分布を活用し,構造計算を行うことで,従来法より遙かに高精度に構造解析が可能なことを示した.また,これらのNMR解析法を,これまでの蛋白質や核酸のみから,任意の有機分子にも適用可能な改良を加え,その有効性を検証した(J. Biomol. NMR 63, 21-37 (2015)).これにより,特に創薬研究に応用されるような蛋白質-リガンドの構造解析に応用が可能となった.複合体の構造解析では,これに加えて,測定とデータ解析を組み合わせた新手法として,薬の候補分子と蛋白質の構造活性を推定可能な, NMR^2法の開発に成功した. 本法は,複合体の結合部位を原子解像度で決定できる高速・堅牢な手法として,今後の創薬開発に大きく貢献できると期待される.本年度はさらに,NMRデータから正確な距離情報を見積もることのできるeNOE法(J. Struct. Biol. 191, 306-317 (2015); Biophys. J. 110, 113-126 (2016))やシクロフィリン酵素の2状態解析にも成功した(Angew. Chem. 54, 11657-11661 (2015)).
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 10件、 査読あり 10件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (11件) (うち招待講演 11件)
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