研究課題
基盤研究(C)
NADH シトクロムb5 還元酵素(b5R)は酸化還元酵素の1つであり、生体内において不飽和脂肪酸の合成、薬物代謝、コレステロールの合成、赤血球の維持などに関与している。b5Rが触媒する酸化還元サイクルにおいて、b5Rは電子供与体であるNADH から電子を2つ受け取り、2つあるドメインの境界に存在する補因子(FAD)を介して、電子受容体であるシトクロムb5(b5)に1つずつ電子を伝えることが分光学的手法により明らかにされているが、原子レベルでの詳細な理解は進んでいない。本申請研究は、中性子およびX線結晶解析法と分光学的手法を組み合わせることによりb5Rの構造-機能相関を明らかにし、これまで断片的な理解に留まっていた酸化還元酵素の触媒機構の全容を全原子レベルで解明することを目的としている。平成25年度は、嫌気環境で作製した二電子還元型結晶を酸素に暴露し、再酸化型までの動的変化を顕微分光を併用した時分割X線結晶解析に成功した。その結果、還元型から酸化型への再酸化反応はドメインの相対配置の変化を伴う2段階で生じていることが2Å以上の高分解能で明らかになった。本成果を、過年度に実施した酸化型の0.78Åの超高分解能および二電子還元型の1.68Å分解能解析結果から明らかにしたb5R中のFADからのプロトン放出とb5への電子移動促進機構と統合することにより、b5Rが触媒する酸化還元サイクルの全容解明が大きく前進した。この成果をまとめた論文はJournal of Molecular Biology誌に受理、掲載された。
2: おおむね順調に進展している
嫌気環境で作製した二電子還元型結晶を酸素に暴露し、再酸化型までの動的変化を顕微分光を併用した時分割X線結晶解析に成功し、その成果を国際誌に発表することができた。
引き続きb5Rが触媒する酸化還元サイクル全容解明に取り組む。現時点では研究計画の変更は必要なく、研究遂行上の大きな課題も発生していない。平成26年度は、b5R(酸化型)の中性子結晶構造解析を実施し、水素原子を含む全原子構造情報を明らかにする。また、電子受容体であるb5の超高分解能X線解析にも取り組み、b5Rからb5への電子伝達機構の詳細解明にも挑む。
下記の使用計画にあげた物品購入の一部に充てるため、次年度に回すこととした。嫌気チャンバー内に新たに導入する分光光度計の購入に充てる。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)
Journal of Molecular Biology
巻: 425 ページ: 4295, 4306
10.1016/j.jmb.2013.06.010