研究課題/領域番号 |
25440037
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研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
玉田 太郎 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門量子ビーム応用研究センター, リーダー (50391248)
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研究分担者 |
平野 優 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門量子ビーム応用研究センター, 博士研究員 (80710772)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 中性子結晶構造解析 / 高分解能X線結晶構造解析 / 酸化還元酵素 |
研究実績の概要 |
NADHシトクロムb5還元酵素(b5R)は酸化還元酵素の1つであり、生体内において不飽和脂肪酸の合成、薬物代謝、コレステロールの合成、赤血球の維持などに関与している。b5Rが触媒する酸化還元サイクルにおいて、b5Rは電子供与体であるNADHから電子を2つ受け取り、2つあるドメインの境界に存在する補因子(FAD)を介して、電子受容体であるシトクロムb5(b5)に1つずつ電子を伝えることが分光学的手法により明らかにされているが、原子レベルでの詳細な理解は進んでいない。本申請研究は、中性子およびX線結晶解析法と分光学駅手法を組み合わせることによりb5Rの構造-機能相関を明らかにし、これまで断片的な理解に留まっていた酸化還元酵素の触媒機構の全容を全原子レベルで解明することを目的としている。 平成26年度は、b5R(酸化型)の中性子回折実験とb5の高分解能X線結晶構造解析を実施した。前者については、まず嫌気チャンバー内においてバッチ法による結晶作製を行うことにより、空気酸化による劣化を伴うことなく、約2.0mm3の大型結晶を取得した。引き続き、重水および抗凍結溶液に段階的に浸漬した後に、大強度陽子加速器施設(J-PARC)に設置されたBL03(iBIX)ビームラインにおいて、100 Kの低温窒素気流中で中性子回折データ収集を行った。その結果、1.35Å分解能の高分解能回折データを得ることが出来た。後者については、酸化および還元の両状態の結晶をそれぞれ2つの異なる結晶化条件において作製し、計4種類の回折データを放射光施設において収集した。いずれも1Å分解能を上回る高い分解能として取得でき、引き続き実施した高精度構造解析の結果、それぞれの状態間で確認された微小な構造の違いが酸化還元サイクルや電子伝達パートナーとの相互作用に寄与していることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
酸化型b5Rの高分解能中性子回折データを収集でき、中性子構造解析の目途を立てることが出来た。また、b5の酸化・還元両状態の超高分解能X線結晶構造解析を終了し、国際誌への投稿準備も完了することが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きb5Rが触媒する酸化還元サイクルの全容解明に取り組む。現時点では研究計画の変更は必要なく、研究遂行上の大きな課題も発生していない。平成27年度はb5Rとb5の複合体状態での構造解析に取り組み、b5Rからb5への電子伝達機構の詳細解明に挑む。
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次年度使用額が生じた理由 |
下記の使用計画にあげた物品購入の一部に充てるため、次年度に回すこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
嫌気チャンバー内に新たに導入する分光光度計の購入に充てる。
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