平成27年度は、引き続き(1)脂質非対称センサーRim21の徹底解剖、および(2)脂質非対称が乱れた際にその細胞応答過程で中心的な役割を担うOpt2の解析、を行った。 (1)脂質非対称センサーRim21の徹底解剖 センサーモチーフを内包するRim21のC末端細胞質領域(Rim21C)の解析を引き続き行った。私達が同定したセンサーモチーフに変異を導入したRim21変異タンパク質は、センサー複合体の形成や細胞内局在には異常を示さず、脂質非対称を感知する素過程に直接的に関与することを示唆した。また、脂質非対称の変化に伴って起こるRim21Cの細胞膜からの解離について、顕微鏡画像からその程度を定量化した。ここまでの結果を総合し、投稿論文および学会発表として発信した。さらに、センサーモチーフと負電荷を有する脂質との相互作用に際して、ホスファチジルエタノールアミン(PE)がその結合力を増強する効果を有していることを見出した。PE自身は電荷を有していないが、プロトン受容能の持つアミノ基を有しているため、負電荷を有する脂質の脱プロトン化が促進し、その負電荷が強調されたためだと考えられる。 結合した脂質およびそれを増強したPEは、そのほとんどが細胞膜では内層側に存在し、センサーモチーフと相互作用できる位置関係にある。したがって、実際の細胞内でもこの様な作用が起きていることは十分に考えられる。 (2)Opt2の解析 Opt2のフロップ活性を直接的に検出するin vitro系の構築を行った。その結果、Opt2を含むゴルジ体由来の膜小胞を作製・精製することに成功した。現在は、この精製系を用いてOpt2のフロップ活性の検出を試みている。
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