研究課題/領域番号 |
25440042
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山本 勝良 東京大学, 医科学研究所, 特任助教 (70508366)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | シグナル伝達 / MAPキナーゼ / HOG経路 / 酵母 |
研究概要 |
高浸透圧刺激によって活性化するHOG (High Osmolarity Glycerol) MAPキナーゼ(MAPK)経路と、栄養飢餓によって活性化するFG/IV (Filamentous Growth/Invasive Growth) MAPK経路は、共に、経路が活性化する際に、1回膜貫通蛋白質Opy2とアダプター蛋白質Ste50との結合を介して経路活性化の鍵を握るSte11 MAPKKKを細胞膜に局在化させるという共通のシステムを用いる。しかしながら、両MAPK経路間の混線は起こらない。最近、グルコース(栄養豊富)に依存して活性化するカゼインキナーゼYck1/2によってOpy2の細胞内に存在するSte50結合サイトの1つがリン酸化されること、また、リン酸化されたOpy2にSte50が結合してHOG経路のみが活性化することを見出した。Opy2-Ste50結合様式の違いが、HOG経路とFG/IV経路との混線が起こらない理由の1つであると考えられる。上記の研究成果をもとに、リン酸化に依存したOpy2-Ste50結合誘導を負に制御する因子の単離を進めた。yck1/2温度感受性変異株にYck1/2によってリン酸化されるSte50結合サイトのみを持つOpy2変異体をノックインさせた。作成した株にEMS変異原処理を行い、その後、半許容温度下での高浸透圧刺激後のHOG経路の活性化状態を8xCRE-lacZフィルターアッセイによって評価したところ、lacZレポーター遺伝子の発現が上昇したことを示す青色の変異体を単離することに成功した。単離した変異株について、変異が入った遺伝子(原因遺伝子)の特定と、その原因遺伝子産物の機能解析を進めることによって、異なる刺激によって活性化する、共通システムを有する酵母MAPK経路間の混線が起こらない仕組みの解明が前進すると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、経路活性化に共通のシステムを利用しながらも、2つのMAPKシグナル伝達経路間の混線が起こらない仕組みを明らかにすることである。これまでに申請者が見出した研究成果をもとにして作成した実験計画に従い、研究目的を達成するための第一段階である、2つのMAPK経路間の混線が起こらない仕組みに関わる因子に変異を持つであろう酵母変異株の単離に成功した。従って、本研究を開始した今年度の研究進捗状況は、おおむね順調に進展しているという評価が妥当であると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
現在までに単離に成功している、2つの酵母MAPK経路間の混線が起こらない仕組みに関わる因子に変異を持つであろう変異株について、原因遺伝子の特定を進める。その後、特定した原因遺伝子を破壊して再構成した変異株を用いた遺伝学的解析と、原因遺伝子産物の生化学的解析を進めていく予定である。また、研究計画書に従い、質量分析計を用いてOpy2細胞内領域に結合する因子の特定を開始する。FLAGタグとOpy2の細胞内領域とを融合させたFLAG-Opy2 Cytoコンストラクトを作成し、酵母細胞内で発現させ、FLAG-Opy2 Cytoを免疫沈降させた時に、共沈してきた因子を質量分析計によって特定する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
助成金は主に物品費として使用しているのだが、今年度の研究計画に従って実験を行う際に必要となる消耗品の購入が当初予定していたよりも若干少なく済んだことが、次年度使用額が生じた理由である。 本研究を進める際に必要不可欠である、抗体、酵素類、培地、培養チューブ、オリゴDNA、培養ガラス器具などの消耗品の購入に使用する予定である。
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