研究課題
本研究では、細胞シグナル伝達経路の構成要素を脂質2分子膜ベシクル(巨大リポソーム、GUV)の膜に再構成して、少数ながら個別の要素の統合で伝達機能の発現を行おうとしている。過去2年間の実績で、GPCR経路のエフェクタータンパク質であるアデニル酸シクラーゼをGUVに組み込むことに成功した。単独のGUVのアッセイには未だ達成できていないが、集団の反応は捉えられたと思われる。それらを踏まえて、H27年度の実績をさらに進め、組換え膜タンパク質を提示する組換えバキュロウイルス粒子とリポソームとの膜融合による人工細胞システム構成技術の研究を進めた。前年度は、環状ヌクレオチド感受性イオンチャネル(CNG)のサブユニットの細胞発現を調べ細胞の三重感染効率の低さを認めたが、高々3種類の膜タンパク質を含む混合のウイルス懸濁液として用いることで、今年度は張合せ法により調製したリポソーム膜への組込を行った。現在機能の発現に向けて実験の改良を行っている。インテグリン(ITG)の組込については、比較的効率よくα、βの2量体の組込に成功しており、目下、機能発現検討を試みている。また、プロテオリポソーム調製の成否に重要である、膜タンパク質を提示するBV粒子の性状について、前年度、宿主細胞培養条件が影響していることを見出していた。GPCRであるアドレナリンβ2受容体を発現するBV粒子について、構成するタンパク質の解析や、透過電顕の観察により、ウイルス感染前の宿主培養方法(静置、振盪)に、組換えタンパク質の安定性、発現量や、粒子形態が強く相関していることが確かめられ論文発表した。膜融合実験、リガンド結合実験など、目的に応じて、性状の異なる、BV調製法を用いる重要性も認識でき、今後の研究推進に大いに役立つ。
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Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry
巻: 80(3) ページ: 445-451
10.1080/09168451.2015.1101331
http://scholar.google.com/citations?sortby=pubdate&hl=en&user=HesLhbwAAAAJ&view_op=list_works
http://www.bio.chem.mie-u.ac.jp/