研究課題/領域番号 |
25440047
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山田 雅司 大阪大学, たんぱく質研究所, 助教 (90304055)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 基底膜 / ラミニン / インテグリン / テトラスパニン / 上皮極性 |
研究実績の概要 |
上皮細胞は隣接した細胞同士で強く接着することでシート状の構造を形成している。上皮細胞の形質膜は密着結合を境界として基底膜に接する側底面と、その反対側に位置する頂端面に分かれている。この二つの膜領域を構成する蛋白質や脂質の組成は異なっており、この様な非対称性を頂底極性と言う。さらには、ゴルジ体の配置および微小管の走行においても頂底軸に沿った極性が形成される。こうした頂底極性は上皮組織の機能発現において重要な役割を果たしており、その破綻は癌などの疾患の原因となる。基底膜は上皮細胞の直下に存在する薄いシート状の細胞外マトリックスであり、基底膜の主要構成蛋白質であるラミニン(LN)がLN結合性インテグリンに結合することでその機能を発揮する。 基底膜成分を含む培地中で上皮細胞を3次元培養すると、シストと呼ばれる一層の極性化した上皮細胞シートからなる中空の構造体が形成される。このシストは周囲を基底膜で覆われており、生体内の上皮組織と非常に似た性質を示す。我々は、シスト形成能の低い2種類の癌細胞においてLN結合性インテグリンの発現が著しく低いことを見出した。さらに、これらの癌細胞にLN結合性インテグリンを強制発現させると、極性を持ったシストの形成が誘導・促進されることを見出した。1種類の癌細胞においては、LN結合性インテグリンの機能を正に制御する膜蛋白質であるテトラスパニンCD151を発現させることによっても、LN結合性インテグリンを発現させた場合より程度は低いが、同様の効果が観察された。これらの結果は、癌細胞において、LN結合性インテグリンが頂底極性形成の誘導・促進に働きうることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ラミニン結合性インテグリンが上皮細胞の極性化を正に制御しうることを示す重要な結果を得た。ただし、このラミニン結合性インテグリンがどの様な機序でこの効果を発揮しているかはまだ明らかに出来ていない。現時点では現象論にとどまっているため、非常に順調に進んでいるとまでは言えない。
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今後の研究の推進方策 |
ラミニン結合性インテグリンの細胞内領域に着目し、基底膜による上皮極性制御機構を明らかにすることを目指す。細胞内領域に変異を入れたインテグリンを発現させ、上皮極性形成への影響を調べる。影響が観察された場合は、インテグリン細胞内領域に結合する蛋白質の探索を行う。
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