研究課題/領域番号 |
25440048
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
鍔木 基成 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00145046)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | アスコルビン酸 / シトクロムb561 / 膜タンパク質 / ヘムタンパク質 / 電子伝達 / 神経伝達物質 / 線虫 / 資化性酵母 |
研究実績の概要 |
線虫をモデル生物として用いる事によりcytochrome b561タンパク質の生理機能解明を目的とした研究を行っている。ゲノム解析により線虫には7種類のb561ファミリータンパク質(Cecytb-1~Cecytb-7)が存在していることが分かっている。今年度は、そのアミノ酸配列から考えて、ヒトを含む高等動物の脳神経系に特異的に発現しているCGcytb561に最も類縁と考えられるCecytb-1に関しての研究を進めた。まずメタノール資化性酵母Pichia pastorisとpPICZ-Bベクターを用いた遺伝子組換体の作成により、資化性酵母の膜中に発現させたCecytb-1タンパク質の可溶化と部分精製方法を確立した。部分精製標品に対して分光学的解析を行い、神経型b561と非常によく似た性質(可視吸収スペクトル、アスコルビン酸による還元性)を示すことが分かった。続いて、Cecytb-1タンパク質の線虫体内における発現局在を調べた。まずin situ hybridizationによる遺伝子発現部位の解析を行った。その結果、adult期の卵巣において転写発現していることが判明した。さらに、親水性C末端部分に特異的に結合する抗ペプチド抗体を用いた免疫染色を行った。その結果、Cecytb-1タンパク質は咽頭、卵巣に発現していることが分かった。これらの発現部位は線虫の神経伝達物質オクトパミンの生合成を行っているTBHの発現局在と似ていることが分かった。最後にCecytb-1タンパク質の線虫体内における生理機能を調べるため、RNA干渉(RNAi)を行った。Cecytb-1遺伝子を元に合成したdsDNAをSoaking法により線虫体内に導入して遺伝子発現をノックダウンする事を試みたが、この遺伝子は抑制効果を受けにくいことが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
資化性酵母を利用した異種発現系を構築する事により、線虫b561ホモログの1つであり、高等動物の脳神経系に特異的に発現しているCGcytb561に最も類縁のCecytb-1タンパク質をについて、そのヘムが結合し、アスコルビン酸からの電子受容能を保持した活性型において発現させることに成功した。さらに部分精製にも成功した。しかしRNA干渉によるCecytb-1遺伝子のノックダウンの効果がほとんど出ない。しかしこのことは線虫の神経細胞ではRNA干渉が効きにくいという傾向を考えると、Cecytb-1タンパク質の線虫神経細胞での特異的発現していると言うことをサポートしている実験結果ともいえる。
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今後の研究の推進方策 |
これまで線虫のb561ホモログの内、Cecytb-2、 Cecytb-5、そして今回のCecytb-1と行ってきている。現在のところ2つの困難がある。1つは資化性酵母を用いた異種発現系での発現効率の悪さである。2つ目はRNA干渉による遺伝子ノックダウンの程度がそれほど顕著に出ないということである。発現効率の悪さについては遺伝子多コピー株を簡便に選択する方法を開発しつつあるので、何とか打開できると考えられる。遺伝子ノックダウンについては用いているsoaking法の効率の悪さが原因とも考えられるので、injection法等の別の手法も考慮する必要がある。
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