研究実績の概要 |
線虫をモデル生物として用いる事により、高等動物において通常6種類存在しているcytochrome b561ファミリータンパク質の生理機能および分子機構の解明を目的とした研究を行っている。線虫のゲノム解析により、線虫体内では7種類のb561ファミリータンパク質(Cecytb-1 ~ Cecytb-7)が存在している。(その内、2種類ほどは非常に相同性が高く、同一の機能を持つものと考えられる)今年度は、そのアミノ酸配列を考慮して、ヒトを含む高等動物の腸組織に特異的に発現しているDcytbに最も類縁であると思われているCecytb-2に関しての研究を推進した。 Cecytb-2については、以前に当研究室所属の三浦氏によって、線虫の腸組織に発現し、Dcytbとしての生理機能を持つことが明らかにされており、また、メタノール資化性酵母Pichia pastorisとpPICZ-bベクターを利用した大量発現系の構築と精製方法が確立されている。 今年度は、一昨年に明らかにされたシロイヌナズナのcytochrome b561のX線結晶構造の情報をもとに、Dcytbの持つ酸化鉄還元活性(ferric reductase)発現のための鉄イオン結合部位を明らかにすることを目指した。そのため、7種類の部位特異的変異体(D64S, T123H, T132Y, T132F, E199S, D207S, E215A)発現用プラスミドを作製した。このうち、鉄還元に影響が大きいと考えられるD64SとE199S変異体について、変異タンパク質を発現・精製した。精製後のD64S, E199S変異タンパク質はいずれもAsA還元によってb561に特徴的な561 nmにピークを持つ吸収スペクトルを示した。このことから、2つの変異タンパク質は正しく発現しており、ヘム結合型として精製できたことがわかった。
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