4-ヒドロキシプロリンは主にコラーゲンに含まれる非標準アミノ酸である。緑膿菌や窒素固定細菌は、他の細菌にはないヒドロキシプロリン資化能を有している。本研究では、このユニークな性質を担保する代謝酵素について、主に以下の3項目について分子生物学的、生化学的解析を行った。 ①D-ヒドロキシプロリン脱水素酵素(D-HypDH)の触媒メカニズムの解明:大腸菌による組み換え酵素発現・精製系の確立を行った後、ヒドロキシプロリンとプロリンの基質認識に関わるアミノ酸残基を同定した。また、各サブユニットの個別発現によりβが触媒サブユニットととして機能すること、フラビン補因子の結合における各サブユニットの果たす役割について重要な知見を得た。 ②Pyr4H2C脱アミノ化酵素の触媒メカニズムの解明:部位特異的変異体の解析から、活性残基リシンと、2つの重要なアスパラギン酸残基を同定した。NaBH4による修飾と質量分析により、リシン残基におけるシッフ塩基中間体の存在が証明された。 ③細菌の3-ヒドロキシプロリン代謝経路の解明:窒素固定細菌が3-ヒドロキシプロリンも資化できるという予想外の事実が分かり、バイオインフォマテックス解析により代謝遺伝子クラスターを見出した。組み換え酵素による生化学的解析の結果、3-ヒドロキシプロリンは2つの酵素により最終的にL-プロリンに分解されることを明らかにした。 ④機能道遺伝子のアノテーション:ヒドロキシプロリン代謝遺伝子クラスターには、一見して必要性が認められない2つの遺伝子が含まれている。このうちひとつは上記3-ヒドロキシプロリン関連酵素であることが分かった。さらに、もう一つのアコニターゼ様遺伝子について基質と反応様式を発見した(次年度以降の新規科研費で継続研究)。
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