研究実績の概要 |
本年度計画に沿って以下の研究を実施した。「活性化GPCRの選択的エンドサイトーシス機構」については、PI4キナーゼであるStt4について、その遺伝子の欠損により活性化GPCRのクラスリン被覆小胞への取込みに著しい異常が生じることを明らかにした。今年度は、さらにStt4遺伝子のノックダウンによるエンドサイトーシス機構に与える影響を解析し、Stt4遺伝子のノックダウンは細胞膜内のPI(4)PとともにPI(4,5)P2レベルを著しく低下させ、この結果、クラスリン被覆タンパク質の集積の遅延が起こることが明らかになった。特に、PI(4,5)P2結合活性のあるENTH/ANTHドメインを持つ被覆タンパク質群のエンドサイトーシス部位への集積に遅延が生じることを明らかにした。 「活性化GPCRのリソソームへの輸送機構(分解機構)の解明」については、酵母遺伝子欠損変異体ライブラリーの6000種類全てのスクリーニングを完了し、異常の見られた変異体について、データーベース解析により、細胞内小胞輸送に関わる可能性のある遺伝子を99種類抽出した。これらの変異体について、蛍光α-factorが蓄積している部位をもとに分類した結果、細胞膜に蓄積している変異体(クラスA)、輸送小胞に蓄積している変異体(クラスB)、液胞前領域に蓄積している変異体(クラスC)、蛍光α-factorの細胞表面への結が低下している変異体(クラスD)に分類した。これら99種類の変異体については、さらに細胞膜へのα-factor受容体のリサイクリングに障害のある変異体を放射標識したα-factorの結合量を指標に同定することに成功した。この結果、α-factor受容体のリサイクリングに関わる因子として、アクチン骨格の制御に関わるもの、PIのリン酸化代謝に関わるもの、エンドソームからゴルジへの逆行性輸送に関わるものを複数同定した。
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