我々は、シャペロニンGroELの2つのリングが同時に活性化状態にあるフットボール型反応中間体を経由するダブルストローク反応モデルを提案している。細胞内GroEL複合体を解析するため、光クロスリンク技術により細胞内で形成されたフットボール型複合体の検出を行った。光反応性アミノ酸アナログ(pBpa)をGroESのGroEL結合部位に導入し、UV照射後に細胞を破砕して、ウェスタンブロッティングで解析したところ、細胞内において1分子のGroELに2分子のGroESが結合したフットボール型複合体と、フットボール型複合体のGroELリング間がスプリットしたシングルリング複合体が、弾丸型複合体に加えて検出できた。温度ストレスにより変性タンパク質が増加した環境下では、フットボール型複合体が増加傾向にあることも示唆された。 次に、蛍光相互相関分光法による生きた細胞内でのGroEL複合体観察を目指し、シャペロニン機能を保持したGFP-GroEL融合タンパク質を作製した。GFP-GroELは14量体リング構造を形成し、野生型と同等のATP加水分解活性と基質フォールディング活性を示した。このGFP-GroELを発現した大腸菌のFCS観察から、妥当な分子量のGFP蛍光を観察でき、生きた細胞内でGroELの観察が可能であることを示した。また、7量体GroESを遺伝子上で連結し、さらにGFPまたはHalo-tagをそれぞれ融合したタンパク質の菌体内同時発現系を構築した。細胞外から取り込ませたTMRラベルHaloリガンドの蛍光とGFP蛍光を、同一菌体内で検出できたため、細胞内FCCS観察に着手している。本研究により、生細胞内で機能しているGroEL/GroES複合体を観察するツールが完成したので、これまで試験管内で精製タンパク質を用いて研究してきたシャペロニンの作用機構が細胞内で検証可能となった。
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