研究課題
基盤研究(C)
生体内において、一酸化窒素(NO)のみならず一酸化炭素(CO)が、ガス状のシグナル伝達分子として働き、抗炎症作用や細胞保護作用、血管拡張作用など様々な生物作用を有することが明らかになりつつある。ヘムオキシゲナーゼ(HO)は、生体内で代謝的にCOを生成する唯一の酵素であり、内因性のCOの大部分は、HO反応によって生成される。一方で過剰のCO生成は生体毒となるため、COの発生源であるHOの活性は厳密に制御されていると考えられるが、その詳細は明らかではない。ガス状シグナル伝達分子として一酸化窒素(NO)が知られているが、最近、Osawaらによって神経細胞に存在するNO合成酵素(nNOS)はユビキチン-プロテアソーム系によって分解され、その半減期は比較的短い(約30分)ことが報告された。この現象は、同じく神経細胞に多く存在するHO-2でも観測される可能性が高い。そこで、本年は、HOの2種のアイソザイムの細胞内寿命について検討する目的で、哺乳細胞系でのHOの強発現系の構築を試みた。まずHO-1およびHO-2のcDNAをpcDNA3.1/His-TOPO vectorに組み込み、HEK293へトランスフェクトした。細胞抽出液をSDS-PAGE後、抗HO-1および抗HO-2抗体でウエスタンブロットしたところ、目的タンパク質が強発現されていることが確認された。Cycloheximide(タンパク質合成阻害剤)存在下で、HO-1の細胞内寿命を評価した結果、そのターンオーバーの半減期は約8時間ということが明らかになった。HO-2の半減期はさらに短いことも確認された。
2: おおむね順調に進展している
本年度の目的は、1.HOの発現異常が認められる疾患由来の細胞において、各種誘導剤、阻害剤存在したでのHOの2つのアイソザイムの細胞内寿命を比較し、ヘムの分解活性との相関を調べること、2.非誘導型HO-2に特有の構造(N末端延長配列およびヘム制御モチーフ)に着目し、修飾部位特異的抗体、質量分析法、部位特異的変異法を併用して分解シグナルの探索を行う ことであった。本年度行った結果から、HOの2つのアイソザイムの間で、細胞内寿命の違いがあることが確認されたこと、さらに、分解シグナルの探索を行う上で必要となるHOの部位特異的変異酵素を準備することができたことから、おおむね順調に進展していると思われる。
HOの量的制御が破綻し、過剰発現したHOが観測される慢性骨髄性白血病由来のK-562細胞において細胞内寿命をWestern blot法と、Real-time PCR法を用いて解析を行う。また、心筋虚血再灌流障害ではHOの発現レベルが増強しているにも関わらず、そのHO活性が抑制されているとの報告があるため、HOのmRNA発現レベルとHOのヘム分解活性の経時変化について詳細に解析を行う。さらに、HOの細胞内寿命を決定する因子、活性を制御する因子の探索を行う。
年度末に発注した合成オリゴDNAおよび、質量分析法によるペプチドマッピングの前処理で使用するZipTipが海外発注となったため、次年度の支払となったため。納期が遅れた物品については、すでに納品され、それを使用した質量分析解析、および発現用コンストラクトの作成は終了済みである。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (13件)
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