研究実績の概要 |
昨年度にツール作りの一環として、植物ゲノムに変異を入れて機能変異体を作出する系の開発を行い、大気圧プラズマを用いて植物細胞に直接生体高分子(タンパク質やDNAなど)を導入することに成功したと報告した(Yanagawa et al, PLoS One, 2017)。本年度はこの開発した技術を実際の植物研究に利用できる形にするための研究を行った。植物は細胞表面のクチクラ層や細胞壁があるために、動物等で利用されているタンパク質導入法をそのまま使うことができず、また実際の応用研究に利用できるレベルの技術に確立された植物用のタンパク質導入技術はまだない。また、DNA導入法に関してはある程度確立されてはいるが、とはいえ既存の方法では限られた植物種や組織にしか利用できない。そのため、植物細胞に直接タンパク質やDNAなどを導入する新しい技術の開発が求められていた。開発した大気圧プラズマを用いた植物細胞への生体高分子導入法を実用化レベルの技術にすることは、将来の植物研究にとって新しいツールを提供できるという点で環境応答能の研究はもちろんのこと、広く植物分野に貢献すると期待できる。 本年度は、上記の研究成果を外部へアピールすることにも力を入れた。研究成果について高評価を受けたようで、招待講演や一般演題からのシンポジウム採択により複数の学会で発表する機会を得た。さらに、国際学会ではポスター発表の中からshort talkに選ばれ、賞をいただいた。また、化学と生物誌、バイオサイエンスとインダストリー誌から執筆依頼も受け、執筆した。
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