真核生物において、新たに合成された分泌経路で輸送されるタンパク質は小胞体で立体構造が整えられるが、正しい立体構造が取れなかったタンパク質は細胞質に逆輸送されプロテアソームで分解される。この分解機構は小胞体関連分解(ER-associated degradation: ERAD)と呼ばれている。ERADにおけるタンパク質分解は全てプロテアソームが担っていると考えられている。しかしながら、これまでの解析で、出芽酵母において異常糖タンパク質のモデルであるCPY*(カルボキシペプチダーゼY変異体)がプロテアソーム以外のプロテアーゼによって切断されている可能性が示唆されていた。本研究では、その機構を解明するべく解析を行った。その結果、CPY*が切断されて中間体(50kと30k付近の2つのサイズ)が生じること及び、50kの中間体が400から404番目の5アミノ酸で切断されていることが分かった。さらに、細胞質糖鎖脱離酵素ペプチド:N-グリカナーゼ(Png1)によって50kの中間体から糖鎖が切断されている結果も得た。 CPY*を切断する酵素としてメタロプロテアーゼSte24が以前の研究により示されていたので、Ste24がCPY*の分解に重要であるかの解析を行ったが、意外にも強い分解阻害は見られなかった。したがって、現時点ではERAD基質を切断するエンドペプチダーゼの生物学的重要性は全く分からない。しかしながら、Ste24がCPY*の切断に関与していることはERAD基質タンパク質の分解の多様性を示しており、ERAD基質タンパク質がプロテアソームに辿り着く前にどのようなプロセシングを受けるのかは今後解明されるべき事象であると言える。
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