研究課題
タンパク質を構成するプロリン残基のシス-トランス異性化は、タンパク質のフォールディングと機能発現に重要である。本研究の目的は、シス型プロリン残基をもつ分泌タンパク質の品質管理におけるプロリン異性化の役割解明である。我々は以前、分泌型プロテアーゼADAMTS13において基質認識を担うDTCSドメインの立体構造を決定し、シス型プロリン残基4個を同定した。そこで平成25年度(初年度)は、モデルタンパク質としてADAMTS13-MDTCSドメイン(MDTCS)を利用し、プロリン異性化酵素の関与を調べた。MDTCS発現細胞を異性化阻害剤シクロスポリンA存在下で培養すると、MDTCS分泌量は減少した。細胞を小胞体プロリン異性化酵素CypBのsiRNAで処理するとMDTCS分泌量は減少したが、細胞質CypAのsiRNAでは効果が弱かった。つまり、MDTCSの分泌にはCypBによるプロリン異性化が重要であることが分かった。平成26年度には、MDTCS発現細胞にCypBあるいは不活性型CypBを過剰発現させてもMDTCS分泌量は変化しないこと、つまり、内在CypB量は十分であり、不活性型CypBは正常CypBの働きを阻害しないことを見出した。また、シクロスポリンAやCypB siRNAでMDTCSは細胞内に蓄積せず、小胞体関連分解(ERAD)阻害でも細胞内の量は変化しなかった。したがって、CypB機能低下に伴うMDTCS分泌量の減少にERADは関わっていないと考えられた。平成27年度(最終年度)には、CypBとERADの関連性を調べるため、マウス肝臓のERAD関連タンパク質複合体を分析した。その結果、少なくとも一部のCypBは小胞体で複数種のERAD複合体と結合していることが明確になった。つまり、ERADを構成する機能的段階のいずれかにCypBが関与することが示唆された。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 3件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 5件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 5件、 招待講演 2件)
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