2型ミオシン(ミオシンII)の尾部C末端に存在する三つの電荷クラスター領域(負電荷に偏るN1、正電荷に偏るP1とP2)のフィラメント形成における役割と、尾部が折りたたまれた10S構造形成時に頭部と相互作用することが示唆されている尾部のR1とR2領域に注目し、以下の結果を得た。ミオシンIIBのP1およびP2領域の電荷逆転変異体(P1m、P2m)は、それぞれ、細胞内局在、FRAP、Triton solubility assayにおいて、野生型に比べて拡散する、すなわち、フィラメントを形成しにくくなることが示された。ところが、N1mは全ての実験において、野生型と同様の挙動を示した。昆虫細胞発現系によって調製した全長ミオシンIIB-P1mはin vitroにおいてフィラメント形成能が野生型に比べて劣るが、-N1mは野生型とほぼ同様の形成能を示すことがわかった。IIB尾部フラグメントを用いたin vitroにおける光架橋実験により、P1とC末端のnonhelical tailpiece の架橋産物が得られた。以上の結果から、P1とP2がフィラメント形成において重要な役割を果たすことがわかった。予想に反し、N1の重要性を見出せなかったが、相互作用モデルから考えると、得られた光架橋産物はパラレル相互作用時のものである可能性が高く、その際に他の部分ではN1とP1の相互作用が起きている可能性がある。R1の電荷逆転変異体の細胞内での挙動により、R1と必須軽鎖の静電相互作用の10S構造形成における重要性が示された。遊走時の繊維芽細胞のタイムラプス観察により、ミオシンIIAは主に前方でダイナミックに動き、ミオシンIIBは後方のピンと張った領域に集積してくることがわかった。このアイソフォーム間の挙動の違いは、IIAとIIBのキメラミオシンIIの挙動の解析により、尾部C末端領域による可能性が示された。
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