研究実績の概要 |
平成25年度の水銀ラベルをしたリゾチームを用いた実験に引き続き,平成26年度は,Feの吸収端を用いた共鳴X線散乱実験の試料として,ミオグロビンを内包した脂質リポソームの測定を実施した。このリポソーム試料は,脂質成分として細胞膜表面に於いて分子認識や細胞接着などの機能を有する酸性糖脂質であるガングリオシドを含み,そのため,機能性ドラッグデリバリーシステムとして期待できる。薬剤モデルとしてミオグロビンを内包させ,リポソーム内でのそのタンパク質の存在状態を共鳴X線散乱により選択的に決定する目的で作成された。タンパク質内包リポソームのX線構造解析法は,それまでに報告されていなかったが,今年度行った実験と新たな解析法の確立によって,内部構造を含め解析可能である事を見いだしたため,論文として報告できた(J. Phys. Chem. B 2015, 119, 3398-3406, DOI: 10.1021/jp511534u)。Feの吸収端近傍において,入射X線のエネルギーを変化させて散乱データを取得し,散乱パターンのエネルギー依存性(共鳴X線散乱)を観測できた。 吸収端の異常散乱コントラストの変化による散乱パターンの変化の差分解析を行う事で,内包タンパク質の位置の選択的な同定を行う事が可能になると考えている。詳細な解析に関しては現在継続中である。また,十分な統計精度を得る必要が有るため,追試実験を計画している。
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