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2014 年度 実施状況報告書

ミトコンドリアの密集・分散が自身の活性に及ぼす影響

研究課題

研究課題/領域番号 25440065
研究機関東京農工大学

研究代表者

太田 善浩  東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10223843)

研究分担者 高橋 卓也  立命館大学, 生命科学部, 教授 (70262102)
研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワードミトコンドリア / 密集 / 膜電位 / 屈折率
研究実績の概要

ミトコンドリアは、エネルギー産生や細胞死に関わる機能を持つ細胞内器官であり、適切な制御が必要とされている。細胞内では移動・変形をしており、その分布や形態は不均一であり、また、活性も不均一であることが知られている。そこで本研究では、「ミトコンドリアの密集は、形成される電気化学的プロトン勾配を大きくするため、ATP合成の効率化と活性酸素種の発生抑制につながる」という仮説を立て、その検証を目的とする。膜器官が自ら作り出したイオン勾配を利用して行う活動は、ミトコンドリアに限らず他の細胞内器官やバクテリアから多細胞生物の細胞に至るまで広範囲に行われており、本研究の成果には多くの方面への波及効果が期待できる。
平成26年度は、ミトコンドリアの収縮に伴う内部分子の密集に着目し、単離した1つ1つのミトコンドリアを対象に、光学顕微鏡により内部密度と活性を計測した。内部密度は、以前いただいた科研費で我々が独自に開発した画像分離型位相変調微分干渉法により、計測した。内部密度と活性の相関を調べた結果、内部密度と活性の間に正の相関が認められた。従来の同様の研究では、損傷を受けた活性のないミトコンドリアを含めて計測していたため、ミトコンドリアの活性を変化させる因子としての内部密度という考え方はされていなかった。この意味で、本研究で得られた結果は、ミトコンドリアの伸縮などの内部密度変化が活性を変化させることを示した、最初の結果として意義のあるものである。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

ミトコンドリアの活性が内部分子の密集の影響を受けることは、当初の計画に従い、以下の手順で調べた。ミトコンドリアは活性の高い豚の心筋から単離し、ガラスベースディッシュに吸着させた。これらのミトコンドリアの1つ1つに対し、内部密度として屈折率を、活性として膜電位を計測した。屈折率は画像分離型位相変調微分干渉法を用いて、膜電位は膜電位感受性蛍光色素で染色することにより落射蛍光顕微鏡法を用いて調べた。
当初の予想では、ミトコンドリアの内部密度の増加は局所的なプロトンポンプ数の増加につながるので、ミトコンドリアを分極させると考えられた。考えられた問題点は、屈折率を求めるために検量線の作成に用いたビーズと同じ直径を持つ、直径が約1ミクロンのミトコンドリアが統計的有意性を示すのに十分な数集められるかどうかであった。我々は、500以上のミトコンドリアを計測し、その中から直径がほぼ1ミクロンのミトコンドリア22個を選び出し、相関を調べた。こうして我々が得た結果は、当初の予想を支持するものであり、概ね満足のいく結果である。

今後の研究の推進方策

1)ミトコンドリア内pHの計測
我々の仮説は、ミトコンドリアは密集によりプロトンの汲み上げを少なくして、効率的に働くというものである。この仮説を検証するため、密集させたときとそうでないときで、ミトコンドリア内のpHが異なるかどうか調べる。
2)ミトコンドリア内部密度と活性の相関の細胞内ミトコンドリアを対象とした計測
ミトコンドリア外環境を均一にした単離ミトコンドリアでは、ミトコンドリアの内部密度は活性と有意の相関を示した。この結果は、ミトコンドリアの内部密度が活性の調節因子である可能性を示すものであるため、細胞内でも同様の相関が認められるか調べる。
3)計算機シミュレーションによる密集の影響の評価
26年度に引き続き、ミトコンドリアの通常の活動の範囲でミトコンドリア外pHが変化するかどうか、計算機シミュレーションにより調べる。26年度までに作成したモデルを、更に精密化する。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2015 2014

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件)

  • [雑誌論文] Significant correlation between refractive index and activity of mitochondria: single mitochondrion study2015

    • 著者名/発表者名
      Haseda K, Kanematsu K, Noguchi K, Saito H, Umeda N, Ohta Y.
    • 雑誌名

      Biomed Opt Express

      巻: 6 ページ: 859-869

    • DOI

      10.1364/BOE.6.000859

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [学会発表] yclophiln Dがcalcein-AMによるミトコンドリアの染色に及ぼす影響2014

    • 著者名/発表者名
      小林明日香、太田善浩
    • 学会等名
      第14回日本ミトコンドリア学会年会
    • 発表場所
      九州大学医学部 百年講堂
    • 年月日
      2014-12-04 – 2014-12-04
  • [学会発表] ミトコンドリアのダイナミクスを測る2014

    • 著者名/発表者名
      海内寛嗣、杉本雄生、太田善浩
    • 学会等名
      東京農工大学科学技術展2014
    • 発表場所
      東京農工大学(小金井)
    • 年月日
      2014-11-07 – 2014-11-09
  • [学会発表] 細胞分裂時のエネルギー状態のモニタリング2014

    • 著者名/発表者名
      蛭崎琴絵、太田善浩
    • 学会等名
      第87回日本生化学会大会
    • 発表場所
      京都国際会館
    • 年月日
      2014-10-18 – 2014-10-18
  • [学会発表] ROS-independent transient depolarization of mitochondria in cells2014

    • 著者名/発表者名
      Umiuchi K., Ohta Y.
    • 学会等名
      第52回日本生物物理学会年会
    • 発表場所
      札幌コンベンションセンター
    • 年月日
      2014-09-27 – 2014-09-27
  • [学会発表] New approach to isolation of less damaged mitochondria2014

    • 著者名/発表者名
      Shibata T., Yamane R., Katoh K., Ohta Y.
    • 学会等名
      第52回日本生物物理学会年会
    • 発表場所
      札幌コンベンションセンター
    • 年月日
      2014-09-27 – 2014-09-27

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公開日: 2016-05-27  

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