研究概要 |
蛋白質 VanX を 13C, 15N, 2H の安定同位体で標識した状態で定常的に大腸菌で大量発現させるための系を確立した。このような標識試薬は高価であるため、なるべく大量の試料を恒常的に調製できるための条件を探すことは重要である。この試料の一連の NMR スペクトルを測定し、主鎖 1HN, 15N, 13Ca, 13Cb, 13Co の信号の帰属をほぼ終了した。この蛋白質溶液の pH を変えながら二次元 NMR スペクトルを測定し、これの凝集の程度を測定した。次に VanX のどの箇所が凝集における糊付け領域になっているのかを見つけるために、NMR の磁気緩和分散を pH 4 の単分散状態にて測定した。VanX は pH が中性に向かうほど凝集が激しくなり、NMR スペクトルのピークが広幅化してくることが分かった。pH 4.0 の時にもっともシャープなピークを示すことから、この条件で単分散状態にあることが分かる。そのため、主鎖の帰属は、この pH 4.0 の条件下で行った。また、pH に対する凝集性は可逆的であった。この pH を4から少しだけ上げると一部のピークに広幅化が生じ始めるので、その条件下で各種の 15N 核スピンの緩和速度(縦緩和、横緩和、NOE)をはかり、残基ごとの交換速度を見積もる必要がある。また、この交換速度を定量的に解析するために同時に緩和分散を測定する必要がある。ここで交換が見い出された残基が、凝集に関わっている表面残基であると言える。
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