研究課題/領域番号 |
25440070
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
神谷 成敏 大阪大学, たんぱく質研究所, 招へい研究員 (80420462)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 自由エネルギー / 立体構造予測 / 抗原抗体 / 分子動力学シミュレーション |
研究概要 |
1.タンパク質複合体の結合自由エネルギーを効率的に求める方法を開発するために、Random Acceleration Molecular Dynamics法(以後、RAMD法と略す。)を分子動力学シミュレーションプログラムprestoに実装した。RAMD法は、指定した分子鎖(例えば、リガンドや抗原、抗体)の重心に一定の大きさのランダム力をかけることで指定した分子鎖の動きを加速する方法である。分子動力学シミュレーション中に、指定した分子鎖の重心にランダム力を発生し重心の位置とその分子鎖にかかる力をモニターするようにカノニカル分子動力学計算部分を書き換え、正常に動作することを確認した。2.汎用のグラフィックボード(GPU)を利用して静電相互作用計算部分の計算をするようにプログラムの書き換え、CPUのみで計算する場合に比べてシミュレーションを約100倍高速化することに成功した。3.インフルエンザウイルスのヘマグルチニンとヒト・モノクローナル抗体のSurfitプログラムを用いた分子表面探索によるドッキング計算を行い、100個のデコイを作成した。第2位のドッキングスコアのデコイが天然の複合体構造に最も近い複合体構造となり(root-mean-square deviation < 3 Å)、良好な予測結果が得られた。4.天然構造やドッキング計算で得られた天然構造に近い予測構造の熱力学的安定性を確認するため、上で作成したプログラムを用いてこれらの構造を初期構造とした常温における分子動力学シミュレーションを実施した。得られたトラジェクトリは、それぞれ初期構造近傍で揺らいでおり、安定な複合体構造を形成していることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
プログラム開発や、蛋白質間のドッキング、分子動力学シミュレーションが順調に進展したから。
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今後の研究の推進方策 |
ヘマグルチニン-抗体間ドッキングで得られたデコイに対してRAMD法を適用し、結合自由エネルギーを求めてランキングする。全てのデコイに対してRAMD法による分子動力学シミュレーションを実施することは大変困難であるため、粗いスコアを導入してデコイに優先順位をつける。抗体と低分子の相互作用に関する研究においてGeneralized Born/Surface Area (GB/SA)法によるスコアが有効という報告例があり、また、GB/SA法による計算時間は1週間程度と比較的軽い計算であるため、粗いスコアとしてGB/SAを採用する。次に、優先順位の高いデコイ順にRAMD法により結合自由エネルギーを求めるためのシミュレーションを実施する。最後に、得られた結合自由エネルギー順にランキング後、天然構造、または、天然構造に近い構造の順位により、本申請の方法論の有効性を検証する。 アデノシンA2a受容体と抗体の系においても、ヘマグルチニンで実施した一連のアンサンブル作成、ドッキング、ランキングを実施し、本申請の方法論の有効性を検証する。アデノシンA2a受容体は膜タンパク質であるため、RAMD法による結合自由エネルギーの計算の際には、膜の脂質分子、カウンターイオン、水分子を露わに考慮した分子動力学シミュレーションを実施する。
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