研究課題/領域番号 |
25440071
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
茶谷 絵理 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (00432493)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | タンパク質 / アミロイド / 中間体 / 伝播性 / 凝集 |
研究概要 |
アミロイド線維が自らの末端構造を鋳型として構造を複製しながらモノマーが結合・成長する様式は、アミロイドーシスの感染や伝播の分子基盤として極めて重要な性質である。そこで本研究では、アミロイド線維の構造伝播に重要な役割を果たすアミノ酸配列領域を探索し、さらにそれがどのように形成されていくのかの詳細を解明することを目的とする。 初年度は、アミロイド線維の形成途中に経由すると考えられている線維前駆中間体を安定に捕捉し構造解析を行う研究を実施した。インスリンについて様々な形成条件を検討した結果、一旦前駆中間体を蓄積した後これらが会合して成熟したアミロイド線維が形成するという二段階にわたる構造形成が確認され、伝播性は後者で発現することが明らかになった。さらに同様の段階的な構造形成スキームはインスリン由来のB鎖ペプチドでも見られることが確認され、このことから線維前駆中間体の観察はアミロイド線維の形成機構を明らかにするための有用な手法になると期待している。 また、線維前駆中間体をペプシン処理し成熟アミロイド線維と構造比較した結果、伝播性の発現に必要な構造形成部位存在する可能性が明らかになった。今後はこれらの領域の任意の箇所にアミノ酸変異を導入したタンパク質を系統的に作製することを考えており、インスリンの発現系の構築を進めている。同時に、アミロイドβペプチドを用いて同様の解析を行うための準備にも着手している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
線維前駆中間体を経由したアミロイド線維形成反応の発見により、アミロイド線維の伝播性が発現するまでの詳細な構造変化を解明するための糸口を掴むことができた。今後、同様のアプローチ法で様々なタンパク質を解析し、変異体タンパク質の解析も並行して進めることで、アミロイド線維特有の伝播性の発現メカニズムをタンパク質構造の見地から解明できるものと考えている。さらに当経路は、アミロイド線維形成に伴うタンパク質の集合の様子を時系列で追跡する対象としても有用と思われ、新たな研究展開のきっかけを得たと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
伝播に関与するアミノ酸配列領域の存在が提案されたので、平成26年度は、アミノ酸変異導入を用いた新たな解析の検討に着手し、伝播に重要な役割を果たす領域を幅広いタンパク質で簡便かつ効果的に探索できる手法を確立したいと考えている。さらにインスリン以外のタンパク質についても前駆中間体の捕捉および構造解析研究を発展させると同時に、アミロイド線維の伝播性発現のプロセスをより詳細に解明するために、前駆中間体を顕著に蓄積する形成条件を対象にして小角X線散乱法などによる時分割測定を実施することを検討している。
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次年度の研究費の使用計画 |
論文掲載料の支払い手続きが3月末に間に合わず次年度の手続きに変更したため。 残額のうち大半は上記の支払い(1000ドル)に使用し、残りは試薬の購入を行う。
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