研究課題/領域番号 |
25440074
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
白崎 善隆 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (70469948)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 細胞分泌 / 全反射照明 |
研究実績の概要 |
1.研究の目的 免疫系の有する高いロバスト性がシステム的にどのように実現されているのかを解明することは、単に基礎生物学としてだけでなく、数多くの免疫系の破綻に由来する疾患の克服のためにも重要な意味を持つ。本研究では単一細胞レベルでの遺伝子発現の観点から免疫システムの構築・作動原理の解明に迫ることを目指す。この目的達成のために、本研究では、非侵襲的な遺伝子発現時系列解析として液性因子分泌活性を単一細胞レベルでリアルタイムに定量する方法を利用し、数百~数千個の免疫細胞からの分泌活性を秒~分オーダーの高い時間分解能で測定するシステムを開発する。 2.平成26年度の研究実績 本年度においては昨年度に引き続き、数百~数千細胞からのリアルタイム分泌測定システムの開発を行った。昨年度までの検討においてTIRF technology社 導波路型全反射照明装置を利用した広域全反射照明システムを用いて、石英ガラスを導波路基板とし、水と同等の屈折率を有するアモルファスフルオロポリマーCYTOPをPDMSと導波路のバインダーとして用いることで、励起光の漏れ込みを低減することに成功した。本年度は、さらにマイクロウェルアレイ部と励起光導入部の間にカーボンブラックを練り込んだPDMSを吸収体として乗せることで、余分な迷光の削減を行った。さらに、裏面からの迷光を削減する工夫を行うことで分泌観察が可能になる程度まで背蛍光を下げることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度までにおいて、本研究は1細胞からの分泌を観察できる光学チップ作製条件を確立するに至った点において大いに進展があったと言える。実際に培養細胞を用いた分泌観察も一部成功している。しかしながら、細胞の生理活性を反映した分泌の観察をするためには、細胞の生理活性状態を維持するための工夫が必要であることが判明した。これまで我々が実現してきた1細胞実時間分泌システムでは、細胞の活性を損なわないように37℃、5%CO2存在下で蒸発を軽減するために湿度を高く保つための顕微鏡ステージ培養装置を利用していた。しかしながら、導波路型全反射照明装置の形状には対応しておらず、細胞分泌測定時は室温、大気下での測定を行わざるを得なかった。実際、明視野像における細胞動態の活性低下・細胞死が時間を追うごとに見られており、正常な細胞活性を反映した分泌測定とは言えない。また、本年度11月より研究実施場所が変更になったため、測定に供する顕微鏡システムの再構築が必要となった。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度においては、顕微鏡システムの再構築を行うと共に、培養装置への組み込み、及び恒温環境を提供するためのチップ形状の改良を行うことを計画している。また、実際の培養細胞における分泌動態を高時間分解能且つハイスループットで測定する実証データの取得を目指す。また、任意のマイクロウェル構造の作製工程を確立し、ウェル間を導通させたマイクロウェル構造の構築を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度において、研究代表者は研究実施機関の変更が生じたため、当初予定していたよりも研究実施に遅れが生じている。これに応じて、当該年度使用予定であった研究費の一部を次年度での使用に変更した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度においては、当初の研究計画の使用目的と一部を行い、研究実施機関の変更に伴う研究遂行に必要な備品の補充等にも使用する。
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