研究課題/領域番号 |
25440076
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
大橋 一正 東北大学, 生命科学研究科, 准教授 (10312539)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | メカノセンシング / アクチン骨格 / Rhoファミリー / Dblファミリー / 血管内皮細胞 / 乳腺上皮細胞 / 細胞外基質 |
研究概要 |
本年度は、繰り返し伸展刺激によって血管内皮細胞が配向する応答に関与するRho-GEFとして同定したSoloについて解析を進めた。Soloの結合蛋白質を同定するためにプロテオミクス解析を行い、Soloは、アクチンや中間径フィラメントと結合していることを明らかにし、さらに、結合部位を生化学的な解析により明らかにした。また、機械的力負荷を細胞にかけて細胞内のアクチンの重合促進を検出する方法を確立し、Soloの機械的力に対する応答への関与を解析した。その結果、Soloの不活性型変異体の過剰発現は、力負荷刺激による局所のアクチン重合に対して抑制的に働くことが明らかとなった。さらに、Soloの発現抑制による影響について解析を進めている。乳腺上皮細胞の細胞外マトリックスの硬さ依存的な形質転換に寄与するRho-GEFとして同定したFarp1についても解析を進め、昨年度、Farp1がインテグリンと結合することを発見したことから、インテグリンに依存した細胞接着による細胞増殖シグナルの活性化に対する関与を解析した。その結果、Farp1は乳腺上皮細胞におけるコラーゲンやフィブロネクチンへの接着によるMAPキナーゼの活性化に重用であることが明らかとなった。また、アクチン骨格の再構築制御に重要なコフィリンのリン酸化酵素であるLIMキナーゼの活性を簡易に検出する方法を開発しLIMキナーゼの阻害剤を探索した結果、DamnacanthalがLIMキナーゼの強い阻害剤であることを発見した。さらに、Damnacanthalは、LIMキナーゼの活性を抑制することで、細胞移動、癌細胞の浸潤、皮膚の炎症反応によるランゲルハンス細胞の移動を抑制する働きを持つことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
血管内皮細胞に対する繰り返し伸展刺激による細胞の配向に関与するRho-GEFとして単離したSoloについて解析を進め、機械的な力負荷刺激によるアクチン重合の促進にSoloが関与することを明らかにした。また、Soloの結合蛋白質を同定し、これらとの結合ドメインを同定した。これらの成果より、メカノシグナルにおいてSolo働く作用機序を解析する準備が整った。また、乳腺上皮細胞の細胞外マトリックスの硬さ依存的な形質転換に寄与するRho-GEFとして同定したFarp1についても結合蛋白質としてインテグリンを同定し、インテグリンを介した増殖シグナルにFarp1が関与することを明らかにした。当初の計画どおり、2つのメカノシグナルに関与するRho-GEFの結合蛋白質の同定に成功し、Solo, Farp1の各々について、結合蛋白質を介したシグナル伝達経路とメカノシグナル応答の作用機構の解析が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
1. Rho-GEFのメカノセンサーとしての機能解析:血管内皮細胞に対する繰り返し伸展刺激による細胞の配向に関与するRho-GEFとして単離したSolo, Farp1について、メカノシグナル応答における機能を解析する。Solo, Farp1は、結合蛋白質として同定したアクチン線維、中間径フィラメントやインテグリンを介したシグナルによって活性が制御されている可能性が考えられる。そのため、これらとの結合ドメインの欠失変異体を細胞に発現させメカノシグナル応答における機能を解析する。また、Rho-GEF分子自身が力を受けてGEF活性を変化させるメカノセンサー分子として機能する可能性を検討する。SoloのN末端にHaloタグ、C末端にGSTタグを付加した組換えタンパク質を作製し、ラテックス膜状に両末端を固相化してラテックス膜を伸展させて組換えタンパク質に力負荷をかけ、RhoAに対するGEF活性を測定する。さらに、インテグリンにかかる力によってFarp1が活性化する可能性を考え、Farp1についても同様の実験を行う。 2. Farp1の細胞接着における機能解析:Farp1が細胞外マトリックスへの接着によるMAPキナーゼの活性化を促進することが明らかとなったため、前項の機械的な力による活性化の可能性の検討と共に、インテグリンの下流で活性化するFAKやSrc等のキナーゼとの関連を検討する。 3. 細胞-基質間、細胞間にかかる力の可視化技術の確立:細胞-基質間、細胞間にかかる力をリアルタイムで可視化するプローブの開発は、現在のところ成功していない。ミオシン軽鎖のリン酸抗体やカテニンの立体構造を認識する抗体を用いて細胞固定後の抗体染色で力負荷の空間分布を予測すると共に、新たな蛍光蛋白質や機械的力で立体構造が変化することが知られている蛋白質のドメインを用いて新たなプローブの開発を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は、今年度の研究遂行に当たり、実験の効率化、試薬、消耗品の節約、使用方法の見直しによって研究を効率的に推進したために発生した。 次年度使用額は平成26年度請求額あわせ、cDNAライブラリーよりクローニング予定している遺伝子を購入することや作製予定の抗体を購入するなど、作製に時間と労力のかかる試料を購入するために用いる。これにより、より効率的な研究計画の実行が可能となる。
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