世界人口の約3%が罹患しているとされるC型肝炎は、肝硬変、肝癌のリスクを高める。そういった危険性にもかかわらず、その原因ウィルス(HCV)の増殖のメカニズムはほとんど明らかになっていない。HCVのように膜で包まれたウィルスが増殖する場合、宿主細胞の膜輸送システムを乗っ取っている事が知られているため、本申請では細胞内膜輸送をつかさどる低分子量Gタンパク質RabとHCV増殖の関係を明らかにする事を目的としている。また、過去にHCV増殖との関係が報告されているRab33Bや細胞内自食作用であるオートファジーとHCV増殖との間に深い関係があることが示唆されており、Rabタンパク質の中でも特にRab33Bの解析を行なう事で、膜輸送、オートファジー、HCV増殖という三者の関係を明らかにできると考えていた。しかしながら、現在までの解析からはRabやオートファジー関連因子とHCV増殖との関連性を示す明瞭なデータは得られていない。そこで方針を転換し、オートファジーに必須でオートファゴソーム局在タンパク質であるLC3結合タンパク質に注目して解析を行なった。LC3結合タンパク質の代表的なものに細胞内不溶性タンパク質の分解に関わり、自身もオートファジーの基質となるp62/SQSTM1が知られているが、申請者が同定したOATL1/TBC1D25はLC3結合能を持ちながらオートファジーの基質とはならない。解析の結果、p62はオートファゴソームの内外に均等に分布しているのに対しOATL1は外側に偏った分布をしめす事、この分布の相違にはLC3結合タンパク質の多量体化の有無が鍵になっている事を見出した。以上の結果より、オートファジーの基質認識を行なうアダプタータンパク質とオートファジー制御タンパク質との局在分布の決定メカニズムの存在が示唆された。
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