研究課題/領域番号 |
25440078
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
水野 智亮 筑波大学, 医学医療系, 助教 (80529032)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 小胞体ストレス / キナーゼ / ホスファターゼ |
研究実績の概要 |
未成熟タンパク質や異常タンパク質が小胞体内に蓄積した場合(小胞体ストレス)には、小胞体ストレス応答機構が機能することによって、未成熟・異常タンパク質の成熟・修復・除去がおこなわれる。小胞体ストレスは神経変性疾患・糖尿病など様々な疾患に関与することが報告されている。AMP活性化キナーゼ(AMPK)は進化上保存されたキナーゼであり、エネルギーセンサーとして重要な役割を担っている。出芽酵母AMPKオルソログSnf1はエネルギー枯渇に対する適応に加えて、環境ストレスに対する応答に機能することが報告されていた。しかしながらSnf1の小胞体ストレスにおける機能は知られていなかった。我々は前年度までに、Snf1がキナーゼ活性依存的に小胞体ストレス応答を負に制御すること、リン酸化によるSnf1の活性化が小胞体ストレス応答における機能に重要であることを見出してきた。そこで今年度は、Snf1による小胞体ストレス応答制御機構を明らかにすることを主目的とした。出芽酵母小胞体ストレス応答ではIre1-Hac1経路が中心的な役割を果たしている。そこでSnf1がIre1-Hac1経路の活性を調節しているか検討したが、Snf1の欠失および活性昂進によってIre1-Hac1経路の活性は変化しなかった。次に、小胞体ストレス応答に機能することが報告されている既知のシグナル伝達経路の活性をSnf1が制御しているか検討した。その結果、Hog1 MAPキナーゼの活性がSnf1の欠失によって上昇し、Snf1の活性昂進によって低下することを見出した。また、Snf1の欠失によって引き起こされる小胞体ストレス耐性はHog1の機能に依存していた。さらに我々はSnf1が小胞体ストレスによって活性化されることも見出してきており、Snf1は小胞体ストレスによるHog1の活性化を一過的に保つ安全装置として機能していると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Snf1がHog1 MAPキナーゼを負に制御していることを比較的に順調に明らかにすることができ、Snf1の小胞体ストレス応答における詳細な作用機序を明らかにできる見通しがついたため。
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今後の研究の推進方策 |
小胞体ストレス応答においてSnf1がどのようしてHog1を負に制御しているかについて、出芽酵母のモデル生物としての特性を生かし明らかにしていく。まず、Hog1の活性化・不活性化に関わることが知られている因子について、網羅的に発現量・活性を測定する。また、Snf1の下流で機能することが知られている因子について、網羅的に破壊株を作製し、破壊株におけるHog1の活性化状態を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では、小胞体ストレス応答に機能することが報告されている既知のシグナル伝達経路とSnf1の関係性は、各シグナル伝達経路の活性状態をモニターできる市販の抗体を相当数購入することによって検討する予定でいた。しかしながら、解析の比較的早い段階でHog1との関連性を示すデータが得られたため、購入する抗体数を抑えることができた。また、予定していた抗体作製を次年度に繰り越したため抗体作製費として計上していた分が繰り越された。
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次年度使用額の使用計画 |
Snf1の小胞体ストレス応答における機能を明らかにしていく上で、Snf1によってリン酸化される因子の解析は最重要課題のひとつと考える。キナーゼと基質の関係性を解析するツールとして、リン酸化型タンパク質を特異的に認識する抗体は大変有用であることから抗体作製費を計上した。また、Snf1の下流で機能することが知られている因子、Hog1の活性化・不活性化に関与することが知られている因子について、網羅的に遺伝子破壊株の作製、小胞体ストレス感受性およびHog1活性化状態の検討をおこなう予定であり、これらの実験に要する核酸合成費、消耗品・試薬類・市販抗体の購入費を計上した。
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