研究課題/領域番号 |
25440082
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
木村 芳滋 浜松医科大学, 医学部, 助教 (90274703)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | イメージングマススペクトロメトリー / 線虫 / TOF-SIMS / メタボローム |
研究実績の概要 |
線虫C.エレガンスは成虫でも体長1ミリ前後と、イメージングマススペクトロメトリー (IMS)で解析されてきた材料としては非常に小さく、これまで我々が行ったMALDI法によるイメージングでは発現組織の特定が困難であった。そこで高解像度での解析が可能なTOF-SIMS法によるイメージング導入を行い、ナノレベルの高解像度での生体分子の分布を明らかにする。 本年度は昨年に引き続きTOF-SIMSでのイメージングに用いる線虫サンプルの準備条件を検討した。昨年まで用いてきたフリーズクラック法は線虫の形態保持には優れているが、切断面の制御が難しく結果を安定させることが難しいため通常の免疫染色法等で広く利用されている凍結切片法を導入して条件検討することにした。 組織の保持の観点から、1)パラホルムアルデヒド固定の有無、2)凍結切片作成法:通常法と川本法。以上の2点に注目し、これらの条件を組み合わせて4種類のサンプルを作成した。研究協力者石崎逸子氏、眞田則明氏(アルバックファイ)の協力の下にTRIFT Vシステムを用いてTOF-SIMSイメージングを行った。その結果、固定の有無については、検出できるピーク(分子種)を限定されるものの固定は必要であり、行わないと形態の維持が不十分であることがわかった。また凍結切片作成法については形態の保持については川本法がやや優れているものの、フィルムを用いるためシグナルの低下が顕著であり、通常法が優れていることが明らかになった。 以上の結果から、凍結切片法をもちいたC.エレガンスのTOF-SIMS解析には固定した線虫を通常法で切片にすることが最適であると結論した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ナノメーターレベルの高解像度を実現するTOF-SIMSを線虫に導入し、細胞ごとの生体分子の分布を解析することを目指し、サンプルの準備法の検討をおこなった。フリーズクラック法で高解像度イメージングに成功したが、安定度の観点から、改めて凍結切片法の条件を検討し、最適な条件を決定することができた。
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今後の研究の推進方策 |
凍結切片法で得られたサンプルをTRIFT Vシステムを用いてTOF-SIMSイメージングを行う。本年度は野生型のみを用いて条件検討を行ったが、来年度は 野生型と脂質合成変異体の比較,温度などの環境条件の変化を検討することで脂質の細胞内局在の生物学的役割を明らかにする。個々の脂質の分布パターンを炭素鎖の長さと二重結合の数まで区別して解析することは IMS で のみ可能な技術である。 具体的には以下の順序で TOF-SIMS の高解像度イメージング解析を行う。 a)本年度確定した最適条件を利用して生体膜の脂質の分布図を器官ごとまた可能であれば細胞ごとに記載する。 b)脂質の構成要素である脂肪酸合成の変異体(fat 遺伝子)での発現パターンの変化を解析し, LC-MS など他の方法で得られたデータと比較検討する.
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