研究課題/領域番号 |
25440084
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
西村 珠子 国立研究開発法人理化学研究所, 多細胞システム形成研究センター, 訪問研究員 (40415261)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | F-アクチン / WAVE2 / lamellipodin / DAAM1 |
研究実績の概要 |
上皮細胞の細胞間接着はアクチン骨格により裏打ちされている。接着部アクチンのうち、頂端部アクチンについては接着部位の張力維持や収縮に重要であることが知られている。一方、側面部アクチンの役割については、これまでほとんど報告されていなかった。 我々は、神経管形成に関与するforminファミリー分子DAAM1が、培養乳腺上皮細胞において接着側面部に分布していること、またDAAM1のノックダウンを行うと側面部F-アクチンが減少するとともに、側面部E-カドヘリンの分布が基底側に広がること、さらにその際に接着側面部が活発に動くことを見出した。これらの現象は、DAAM1のアクチン重合活性に依存していた。 そこで、DAAM1ノックダウン細胞をトランスウェルで長期間培養したところ、細胞層の形成が異常になることが分かった。また、コラーゲンゲル上で培養してライブイメージングを行ったところ、DAAM1ノックダウン細胞は接着側面部から頻繁に突起を出していた。さらにこの突起形成は、隣接した細胞が野生型の場合には促進されることも分かった。 これらの現象を引き起こすメカニズムを調べたところ、ラメリポディアの動態に関与することが知られるWAVE2複合体およびlammelipodinが接着側面部に分布しており、これらの分子のノックダウンまたはRac1活性の阻害により、DAAM1ノックダウン時の接着側面部の動きが抑制されることが分かった。 従ってDAAM1は、上皮細胞の接着側面部におけるF-アクチン重合を介して、Rac1-WAVE2複合体-lamellipodinにより引き起こされる接着側面部の細胞膜の動きを制御することで、細胞間接着を安定化することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した実施計画をほぼ予定通り行い、おおむね期待通りの成果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究成果については論文にまとめて学術雑誌に投稿し、現在リバイスのための追加実験を行っている。また、学会に参加し、本研究成果について報告する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
これまでに研究を効率的に進めた結果、直接経費を節約できたため。また当初予定を上回る範囲・量の研究成果が得られたことから、より広範な追加実験が必要な見通しであるため。
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次年度使用額の使用計画 |
論文の追加実験に必要な試薬・消耗品、論文投稿代、学会参加費用等に使用する予定である。
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