研究課題/領域番号 |
25440085
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
辻田 和也 神戸大学, 学内共同利用施設等, 助教 (10457054)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 細胞膜の張力 / F-BARタンパク質 |
研究概要 |
細胞膜の張力は細胞膜の形状変化を伴う細胞運動、細胞分裂、発生等基本的な生命現象において不可欠である。近年、細胞運動時の先導端形成や上皮細胞の極性化において、細胞膜の張力が物理的なシグナルとして働くことが分かりつつある。しかしながら、膜の張力を認識するタンパク質は不明なため、細胞膜の張力がどのように生化学的反応に結びつくのかは明らかでない。本年度の研究により、F-BARタンパク質であるFBP17が細胞膜の張力センサーとして働き、先導端形成に重要であることを明らかとなった。FBP17はF-BARドメインを介して重合し、細胞膜でN-WASPを介したアクチン重合を促進する。ライブイメージングにより、FBP17は重合と脱重合を繰り返しながら、自己組織的に極性化し、先導端を形成することが分かった。FBP17の極性化とターンオーバーは非常に相関しており、これは細胞膜の張力を上げると亢進した。逆に、細胞膜の張力を下げると、極性は瞬時に崩壊し、FBP17ポジティブな膜チューブが形成された。これらの結果はFBP17の重合活性は、膜の張力によりアンタゴナイズされることを示している。興味深いことに、F-BARドメインだけでは極性化に不十分であり、FBP17のN-WASPを介したアクチン重合活性が必要であった。アクチン重合は細胞膜を押すことにより膜張力を生み出すので、FBP17の重合とアクチン重合による細胞膜の張力のフィードバック機構が、それらの極性化に重要であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度の研究により、F-BARタンパク質であるFBP17が細胞膜張力センサーとして働くことを示すことができた。よって、当初の目的はほぼ達成できたと考えられる。 またFBP17は単に膜張力を認識するだけでなく、先導端形成に必須であることが分かった。このことは非常に重要であり、FBP17の膜張力を介した自己組織化が先導端を形成することが示唆される。
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今後の研究の推進方策 |
今後は運動能が非常に高い好中球やマクロファージ等の細胞を用いて解析する。 FBP17がこれらの細胞の走化性においても膜張力を認識して極性化するか検討する。 またその極性化がそれらの細胞の走化性に重要であるか解析する。
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