研究実績の概要 |
平成28年度は以下のような解析を行った。 我々は分裂酵母を材料とした研究から以前に、TORキナーゼ複合体TORC2の活性化因子としてRab低分子量Gタンパク質Ryh1(ヒトRab6相同タンパク質)を同定している。GTPと結合した活性型Ryh1は直接相互作用を通じてTORC2を活性化し、GDPと結合した不活性型Ryh1はTORC2活性を促進することはない。Ryh1活性は細胞外環境のグルコースに応答しており、グルコースを豊富に含む培地で培養した分裂酵母細胞ではGTP結合活性型Ryh1が高レベルに存在しTORC2活性も高い。一方、培地中のグルコースを枯渇させるとGTP結合活性型Ryh1レベルが急速に低下すると共にTORC2活性も低下する。 しかしながら、グルコース枯渇条件下で活性化するRyh1とは異なる未知の因子により、グルコース枯渇条件下であっても分裂酵母TORC2は再度の活性化を示す事が明らかとなってきた(Hatano, Tatebe et al., 2015)。そこで、分裂酵母TORC2の欠損変異体を用いた遺伝学的探索を行い、既知のTORC2サブユニットの1つの欠損変異を相補する新奇因子を見出した。現在までの解析から、この新奇因子は既知のTORC2サブユニットの1つを代替する分子機能を有する可能性が示唆されている。 またこれまでに、グルコースに応答したRyh1によるTORC2活性化は、TORC2とTORC2基質タンパク質との物理的相互作用の促進によることが示唆されている。そこで、TORC2中の基質タンパク質認識部位の解析を行い、TORC2制御サブユニットSin1の中央に存在するCRIMドメインが基質タンパク質認識部位として機能する事を見出した(Tatebe et al., 2017)。
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