研究実績の概要 |
HeLa細胞にYIPF1, YIPF2とYIP6を外来性に発現させたところ,YIP1とYIP2は50%以上の細胞で高効率に発現したが,YIP6は10%以下の細胞で低効率でしか発現しなかった。そこで,YIPF6がERADあるいはリソソームで分解されているかどうかを,阻害剤を用いた実験で確認した。YIPF6をトランスフェクションした細胞をエポキソマイシン処理,あるいはバフィロマイシンA1処理したところ,いずれの処理でもYIPF6の量が増加した。したがって,過剰発現したYIPF6はERADで分解されるとともに,一部はリソソームに輸送されて分解されることが明らかとなった。YIPF1についても同様に,両試薬それぞれでYIPF1の増加が観察され,過剰発現したYIPF1はERADで分解されるとともに,一部はリソソームに輸送されて分解されることが明らかとなった。しかしながら,YIPF2については,いずれの試薬でもタンパク質量の増加が見られなかったため,YIPF1,YIPF6と異なり安定であることが示唆された。一方,内在性のYIPF1, YIPF2, YIPF6の量は,どちらの試薬によっても変化しなかった。したがって,内在性のYIPF1, YIPF2, YIPF6は安定であり,ERADやリソソームでの分解を受けていないことが明らかとなった。以上の結果から,YIPF6の発現量が低い理由として,ERADやリソソームでの分解が寄与していることが示唆されたものの,YIPF1も同様の調節を受けているにもかかわらず,YIPF1の発現量が高いことから,YIPF6は主として合成レベルでの調節を受けていることが示唆された。YIPF6もYIPF1も同じベクターにより同じプロモーター下で発現させているため,タンパク質翻訳レベルでの差がある可能性が考えられた。
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