研究実績の概要 |
HeLa細胞にsiRNAを導入してYIPF1, YIPF2及びYIPF6のノックダウンを行った。ウェスタン・ブロッティングによって各タンパク質量を解析したところ,siRNA処理後72時間で,約10%と最大のタンパク質量の低下が観察された。同時点で免疫蛍光染色によってゴルジ体の形態を観察したところ,コントロールsiRNAと比較して有意な形態変化は観察されなかった。ノックダウン細胞をBrefeldinAで1時間処理しゴルジ体の分散を誘導したところ,いずれのYIPFのノックダウンによってもコントロールとの差は観察されなかった。したがって, BrefeldinAで処理によるゴルジ体の分散にはYIPF1, YIPF2, YIPF6は関与していないことが示唆された。面白いことに,BrefeldinAで処理後,薬剤を洗浄除去し1時間培養したところ,コントロールの細胞ではゴルジ体がリボン状に再構築されたが,YIPF1及びYIPF2ノックダウン細胞では,リボン状への再構築が優位に阻害された。YIPF6のノックダウンではこのような効果は観察されなかった。したがって,BrefeldinA処理後のゴルジ体の再構築においては,YIPF1及びYIPF2は促進的に働くことが示唆された。ムチンを産生するHT-29細胞を用いて,YIPF1, YIPF2及びYIPF6のノックダウンを行い,PAS染色にて糖鎖合成量を解析したところ,YIPF1あるいはYIPF2の発現抑制によって糖タンパク質の合成が低下していることが明らかとなった。一方,YIPF6のノックダウンではこのような効果は見られなかった。以上のことから,YIPF1及びYIPF2は小胞体からゴルジ体への輸送とゴルジ体での糖鎖合成に促進的に働くことが示唆された。
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