研究課題
極性をもつ上皮細胞において、微小管は、頂端―基底軸に沿って配列する特徴的な編成を示す。微小管のマイナス端は頂端面に向き、プラス端は基底面に向くとされている。本研究では、この上皮細胞に特徴的な微小管編成が形成されるしくみと、その役割を明らかにする目的で、非中心体微小管マイナス端に結合するCAMSAP3に着目し、CAMSAP3変異マウス小腸と、培養上皮細胞(Caco-2)を用いた解析を行っている。昨年度までの研究から、小腸上皮細胞では、CAMSAP3が頂端面の細胞膜直下に局在して微小管マイナス端を繋ぎ止めることにより、頂端-基底軸に沿った配向を可能にしていること、この微小管編成は、細胞内小器官の正しい配置に必須であることが分かった。Caco-2細胞の三次元培養実験系からは、CAMSAP3の機能が破壊されると、細胞内で微小管の配向がランダムになること、CAMSAP3の局在が微小管マイナス端の位置を規定するために、必要十分であることが分かった。平成27年度は、CAMSAP3が頂端面に局在する機構を知るために、Caco-2細胞を用いた実験を行い、以下の結果を得た。さらに、本研究から得られた結果をまとめ、論文を作成した。1.頂端面のCAMSAP3の局在は、微小管とアクチン、双方に依存することが分かった。2.ドメイン解析の結果、CAMSAP3の頂端面への局在には、CAMSAP3の微小管結合領域である、CKKドメインと、プロリンリッチ領域の双方が必要であり、微小管に結合できないCAMSAP3は、細胞質中に散ることが分かった。3.Coiled-coil (CC1)ドメイン内に変異を導入したCAMSAP3は、微小管端に結合するが頂端面に局在できない。ことから、微小管マイナス端に結合したCAMSAP3がCC1ドメインを介して頂端面に局在する機構が示唆された。
理研NEWS 2016年5月号 SCIENCE VIEW -上皮細胞の機能と形をつくる微小管の謎を解明-
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Proc Natl Acad Sci USA
巻: 113 ページ: 332-337
10.1073/pnas.1520638113
http://www.riken.jp/pr/press/2016/20160119_1/
http://www.cdb.riken.jp/news/2016/researches/0119_9499.html
http://www.ascb.org/cell-news-microtubules-organize-top-to-bottom-in-epithelial-cells-due-to-camsap3/