研究課題/領域番号 |
25440096
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
牧野 茂 独立行政法人理化学研究所, バイオリソースセンター, 開発研究員 (30462732)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ヘッジホグシグナル伝達 / Sufu / Gli転写因子 / マウス / ENU突然変異 / 神経管形成 / 四肢形態形成 |
研究概要 |
ヘッジホグ(Hh)シグナルでは、Hhリガンドの情報がSufuなど複数の因子を介し、転写アクチベーターとして働くGli2と転写レプレッサーとして働くGli3に伝達される。近年の研究により、Sufuは、Gli2とGli3の安定化やプロセシング反応に必須である事が明らかとなったが、そのメカニズムは不明である。本年度は、理研ENU誘発マウス突然変異ライブラリーから得られたSufu遺伝子のミスセンス変異SufuT396Iの解析を行った。その結果、以下に具体的内容を示すように、Sufuは、Thr396残基に依存して、Gli3の安定化とプロセシングを特異的に制御する事を見い出した。 1、SufuT396Iは、全長のGli3を安定化できず、また、Gli3レプレッサー(Gli3REP)を生成するためのプロセシング反応を仲介する事ができなかった。 2、1の結果は、表現型解析の結果からも支持された。すなわち、SufuT396Iホモ胚では、Gli3REP活性により制御される神経管の背腹軸形成や四肢の前後軸形成に異常が観察された。 3、一方、in vivoとin vitroのどちらにおいても、SufuT396IによるGli2の安定性や活性の制御に異常は見られなかった。 以上のように、Hhシグナルは、SufuのThr396に依存しないGli2アクチベーターを制御する経路と、Thr396に依存したGli3レプレッサーを制御する経路に分岐する事を明らかにした。本年の研究結果により、他のタンパク質との目立った相同性の無いSufuタンパク質の機能を完全に解明するのに近づく事ができた事に加え、Sufuが、正負それぞれの活性を持つGli2とGli3を異なって制御するための足場タンパク質としての役割を果たす可能性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
交付申請書の25年度研究計画に記載した、変異型SufuとGliタンパク質との相互作用および活性制御に関する解析を行い、「研究実績の概要」に示した結論を得た。その結果で論文をまとめ、雑誌に投稿した。さらに、26年度研究計画の一部である遺伝学的解析の一部を行った。
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今後の研究の推進方策 |
交付申請書の通りの方策で研究を進める。26年度には、in vivoでの解析を中心としたSufuによるGli3REP活性制御メカニズムの解明に取り組む。学会発表および論文発表を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
マウス交配実験を優先して進めたため、高額な分子生物学関連実験試薬の利用がH26年度以降となったため。また、 国際会議発表も実験解析を優先させるため、H26年度に論文採択後、発表予定に変更したので旅費の計画を変更 した。 次年度は、計画した分子生物学実験を行うため、交付申請書の通りの額を使用する。また、前年度に得たデータを基に、国際学会を含め複数の学会や会議に参加する予定であり、交付申請書の通りの額を旅費に使用する。
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