研究課題
ヘッジホグ(Hh)シグナルでは、Hhリガンドの濃度依存的にGli転写因子群(Gli1, Gli2, Gli3)の活性が制御され、時期や細胞特異的な遺伝子が発現する。複数の細胞内領域で複雑に制御されると考えられているGli活性の制御機構を分子レベルで明らかにするため、H26年度は、以下2つの大きな成果を得た。1.Gli活性制御に中心的な役割を果たすSufuの機能を明らかにするため、理研ENU誘発マウス突然変異ライブラリーから得られた1系統SufuT396Iミスセンス変異マウスの発生遺伝学的解析によって(1)SufuT396Iは、全長のGli3を安定化する活性と、抑制型Gli3 (Gli3REP)を生成するためのプロセシング反応を促進する活性を失った。(2)一方、SufuT396Iによる活性化型Gli(Gli1とGli2)の制御には、異常は見られなかった。以上の2つの結果を得た。これによって、Gli転写因子活性の制御には、活性化型Gliを制御するThr396を必要としない系と、抑制型Gli3を制御するThr396に依存した2つの経路が存在することを明らかにした(Makino et al. PLoS ONE 2015)。 この成果により、他のタンパク質との目立った相同性が無く既知の機能ドメインも認められない全く新しいタイプのタンパク質であるSufuの、Gli活性制御解明に大きく近づいた。2.Gli3は、部分的なタンパク質分解により生成されるN末端断片(Gli3REP)が抑制型の転写因子として機能する。このGli3活性と細胞内局在の関連を明らかにするため、Gli3タンパク質の生体内におけるリアルタイムでの可視化も並行して進めた。H26年度は、全長Gli3とGli3REPを識別できる、Gli3のN末端とC末端に異なったタグを付加した発現ベクターの構築を行った。
2: おおむね順調に進展している
25年度から続けている、変異型SufuとGliタンパク質との相互作用および活性制御に関する解析を行い、成果を、PLOS ONE誌で発表した。交付申請書の26年度研究計画に記載したGliタンパク質の可視化の研究も進んだ。
交付申請書の通りの方策で研究を進める。27年度には、in vivoでの解析を中心としたGli3活性制御メカニズムの解明及び可視化に取り組む。学会発表および論文発表を目指す。
論文での成果発表およびマウス交配実験を優先して進めたため、分子生物学関連実験試薬の一部の利用がH27年度以降となった。
計画通り、分子生物学関連実験試薬の購入に用いる。
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (4件) 備考 (1件)
PLOS ONE
巻: 10 ページ: e0119455
10.1371/journal.pone.0119455
Scientific Report
巻: 4 ページ: 6959
10.1038/srep06959
http://www.riken.jp/pr/press/2015/20150312_1/