研究課題
RNA granuleの形成・解体は翻訳の抑制・活性化とリンクしており、また、過剰な集合は神経変性疾患などの原因にもなる。このことから、RNA granuleの形成・解体の分子機構解明は近年の重要課題となっている。平成27年度は、アルギニンメチル化酵素PRMT1によるRNA granuleの形成・解体制御について解析を行った。PRMT1は、RG-richドメインのアルギニン残基をメチル化することが知られている。我々はまず、RNA granule形成因子RNG105のRG-richドメインがPRMT1と結合し、メチル化されることを明らかにした。さらに、培養細胞を用いた蛍光イメージングにより、RNG105-GFPによって形成されたRNA granuleが、PRMT1の共発現によって離散することを見出した。メチル化酵素活性が低下した改変型PRMT1は、RNG105をメチル化する活性が低下し、それに伴ってRNA granuleを離散させる活性も低下した。また、メチル化阻害剤Adoxで細胞を処理すると、経時的にRNG105-GFPのメチル化が低下し、それに伴ってRNA granule形成が増加した。以上の結果から、PRMT1によるRNG105のメチル化が、RNA granuleを離散させることが示唆された。さらに、全mRNAの細胞内局在および全タンパク質の翻訳量の定量を行った。その結果、RNG105-GFPの発現によってRNA granuleに取り込まれて翻訳が抑制されていたmRNAが、PRMT1の共発現によって細胞質へ放出され、翻訳が活性化することを見出した。以上の結果をまとめると、PRMT1によるメチル化によってRNG105のRNA granule形成能が低下、RNA granuleは離散し、mRNAが放出されて翻訳が活性化するというモデルが考えられた。
すべて 2016 2015 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
Sci. Rep.
巻: 6 ページ: 20775
10.1038/srep20775
Nat. Neurosci.
巻: 18 ページ: 698-707
10.1038/nn.3984
http://www.nibb.ac.jp/press/2016/02/11.html