研究課題
本研究では、ゼブラフィッシュをモデル動物として小脳神経回路形成の分子機構とその機能の解明を目的とした。1)小脳ニューロン形成に異常のある変異体の解析成熟した顆粒細胞が減少している変異体gazamiの原因遺伝子cfdp1を同定した。Cfdp1は、酵母においてクロマチンにヒストンバリアントであるH2A.Zを取り込む酵素複合体のコンポーネントの脊椎動物ホモログであると考えられている。この変異体では、受精後4から5日目の胚でM期の細胞の蓄積が観察された。しかしながら、同時期の胚においてS期にある細胞数に顕著な変化は見られなかった。以上のことから、Cfdp1は顆粒細胞形成においてM期の進行に重要な役割をしていることが示唆された。また、Cfdp1はc-Mycと結合することを明らかとした。さらにこの変異体では、cycb1の発現が上昇し、cdk4の発現は逆に減少していた。以上の結果は、Cfdp1がMycと協調して細胞周期関連遺伝子の発現制御を通して、細胞周期の進行を制御している可能性が示唆された。2)小脳に依存する学習古典的恐怖学習付け学習:生後20日前後のゼブラフィッシュを用いて条件刺激としてLEDライトの消灯、無条件刺激として電気ショックを行い、条件反応として心拍数の変化を測定する恐怖条件付け学習の実験系を樹立した。小脳顆粒細胞の一部をボツリヌス毒素で阻害したところ、学習が行われないと予想していたが、学習頻度には影響はなかった。しかし、阻害魚では条件反応である徐脈が延長した。また、条件反応の獲得に従って反応する小脳内ニューロンをGCaMPを用いたカルシウムイメージングで同定した。これらのニューロンは、小脳体にある顆粒細胞である可能性が高く、条件反応と相関が示唆された。また、ニューロンの活性化の時間経過より徐脈からの回復過程を制御している可能性が示唆された。
すべて 2017 2016 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (6件) 備考 (1件)
Dev. Growth Differ.
巻: in press ページ: in press
J. Neurophysiol.
巻: 116 ページ: 2067-2080
doi: 10.1152/jn.00042.2016.
J. Comp. Neurol.
巻: 525 ページ: 1558-1585
doi: 10.1002/cne.24114.
http://bbc.agr.nagoya-u.ac.jp/~junkei/