研究課題
本研究では嗅上皮における特徴的なモザイク様の細胞配列に着目し、多様な接着分子の組み合わせによるホモフィリック、ヘテロフィリックな細胞間の接着、さらに接着の促進、抑制といった単純な原理の組み合わせから、組織において機能の異なる細胞が規則正しいパターンで並ぶための鍵となる原理の解明を目指している。これまでの研究によって、発生過程のマウス嗅上皮では嗅細胞と支持細胞が再配列して形態形成を行うこと、さらに、ネクチンやカドヘリンなどの細胞接着分子が異なるサブタイプごとに嗅細胞と支持細胞の間で特徴的な相補的なパターンで発現、局在していることを見出している。本年度は、培養細胞を用いたモデル実験と、モデル実験から得られた結果をもとに、パターン形成における理論的な考察を行った。これまでの細胞選別では、単一の接着分子の性質に着目したものだけであったが、実際の組織の細胞は、通常複数の接着分子を同時に発現している。そこで、ホモフィリックな接着を主にになうカドヘリン、およびホモフィリックとヘテロフィリックな接着の両方を担うネクチンの発現を組合せた細胞を例にして、多様な細胞パターンを作り出すことを試みた。その結果、実験および理論の両面から嗅上皮で見られるパターンを作り出すために必要な接着分子の組合せを見出すことが出来、実際にこのような接着分子を発現するモデル細胞を用いた実験から、培養皿上で細胞パターンの形成を実験的に検証することが出来た。
1: 当初の計画以上に進展している
モデル細胞を用いた実験と理論の両面から、これまでに知られていない新しい細胞選別の例を見出すことが出来た。
細胞と理論の両面からパターン形成のメカニズムが検証され次第、再度、組織の解析を行い、我々の考えるモデルが実際の組織において機能していることを検証する。
本年度は、理論的な考察と培養細胞を用いた実験が主であったため、解析に用いるPCや細胞生物学に用いる消耗品への支出が主となり、出費が比較的抑えられたため。
これまでの結果を元にした、個体、組織における解析が増えるため、実験動物や消耗品の購入にあてる予定である。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 3件)
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