研究課題/領域番号 |
25440108
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
日下部 りえ 国立研究開発法人理化学研究所, 倉谷形態進化研究室, 研究員 (70373298)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 生殖細胞 / 進化 / 遺伝子発現 / 脊椎動物 / ヤツメウナギ |
研究実績の概要 |
本研究では、始原生殖細胞をはじめとする、未分化な前駆細胞の初期発生における起源と挙動が、脊椎動物の進化過程でたどった道筋を明らかにすることを目的とする。円口類ヤツメウナギは、顎や対鰭などをもたず、祖先的な形質を保持した脊椎動物である。これまでに生殖細胞、骨格筋前駆細胞、神経堤細胞などに発現する遺伝子を単離し、発現パターンを解析してきた。平成27年度は北海道カワヤツメLethenteron japonicumの初期胚を用いて、蛍光タンパク質kaedeを微小な領域で光変換することにより、細胞運命を追跡する技術を開発した。まず筋肉特異的な転写を促進する制御配列にkaedeをコードする遺伝子をつないだ融合DNAを、カワヤツメ受精卵に顕微注入し、発生させたところ、咽頭胚において骨格筋前駆細胞特異的なkaede(緑色)の発現がみられた。そこでこの胚を、長焦点距離の対物レンズを装着した蛍光顕微鏡にマウントし、体節一個分という小さな領域に焦点を合わせ、紫外線で励起したところ、kaedeタンパク質が赤色に変換された。この細胞は、のち数週間に渡って観察可能であり、特定の体節由来の骨格筋の移動をトレースすることができた。続いてこの技術を応用し、発生のより初期(原腸陥入期)における光変換と、生殖細胞の移動の追跡を試みる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では希少な野生動物であるカワヤツメを材料とし、受精卵を用いた実験を行うが、ここ数年、個体数が激減し入手が非常に困難である。また、成熟卵の得られる季節も非常に短い。平成27年度は10回程度、人工授精により受精卵を得たが、上記の実験について最適な条件(励起光の照射時間など)を探索するに留まった。データを得るに十分な個体数を用いるにはさらなる研究期間が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
最近、新潟県や山形県産のヤツメウナギを入手するルートを見出したため、より多回数の授精が行えると考える。また、これまでに確立した細胞運命追跡実験のステップを応用し、さまざまな細胞種の移動を可視化することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度には遺伝子機能解析用の試薬キットの購入などを予定していたが、他研究費による購入分などで大半をカバーすることができた。また本研究費で予定していた研究補助員の雇用は行わず、既存の研究室メンバーとの共同作業により研究を進めた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は本研究課題に不可欠なルーティンワーク(魚類飼育、サンプリング、試薬調製など)を行う実験補助員(パートタイマー)を雇用し、解析の能率化を計る。また昨年度に引き続き、胚の顕微注入実験を行うため、より多くのヤツメウナギ成体を購入するほか、遺伝子コンストラクト作製に必要な試薬を購入する。
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