研究課題/領域番号 |
25440110
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
上田 均 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (60201349)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ecdysteroid / 生物タイマー / 変態 / ショウジョウバエ / 蛹 / FTZ-F1 / Blimp-1 |
研究実績の概要 |
前年度にすでにshade遺伝子領域にFTZ-F1の結合部位が存在することを示し、ChIPアッセイにより実際に結合することを示したが、今年度はChIPアッセイをさらに改良し、精度の高い結果が得られた。さらに、熱ショックでFTZ-F1を前蛹中期に強制発現させ、shade遺伝子の発現パターンを調べたところ、コントロール系統よりもshade遺伝子が早く発現することを示すとともにftz-f1変異株でshade遺伝子の発現のピークが大幅に遅延することを示した。これらのことから、shade遺伝子領域にFTZ-F1が直接結合して遺伝子の活性化にかかわる可能性が支持された。 栄養素が3齢幼虫期間および前蛹期間に及ぼすか調べるため、通常のえさに含まれるグルコース、乾燥酵母、コーンミールの濃度を変えて飼育したところ、グルコース濃度が重要な役割をすることが明らかになった。 前蛹期でのFTZ-F1の強制発現およびノックダウンを神経細胞、グリア細胞、上皮細胞、筋肉細部特異的に行ったが、脂肪体でのみられたような明らかな影響は見られなかった。このことから、脂肪体でのFTZ-F1を含めた同定した因子の発現のタイミングが前蛹期間を決めている可能性が高くなった。 D. pseudoobscuraのBlimp-1の強制発現をD. melanogasterで行ったが、蛹化のタイミングへの影響はみられず、D. melanogasterの生体内では両者に分解速度の違いがないものと推定され、D. pseにおいて前蛹期間が長くなる理由は現時点では明らかにならなかった。 トランスポゾン挿入により3齢幼虫期間に影響を与えるftz-f1遺伝子領域のスクリーニングを行い、複数の変異株を同定したが、そのトランスポゾン挿入位置は様々であり、また、影響が生じない変異株での挿入位置が近傍な場合もあり、挿入部位と3齢幼虫期間の間に関連があることを示す結果は得られず、その制御機構が複雑である可能性が生じた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
hadeがFTZ-F1によって直接制御されることを示すことができたこと、同定したタイマー機構が脂肪体で主に作用していることを示す複数の結果が得られるなど脂肪体の重要性をほぼ確実にできたこと、種間での前蛹期の違いはBlimp-1タンパクの分解速度の違いによるものではないことを示唆する結果を得たこと、また、栄養素によって3齢幼虫期期間や前蛹期間に与える影響が異なっていることも示すことができた。ただし、ftz-f1の制御領域の解析は制御領域が単純ではない可能性もあり、まだ完了できていない状況にある。したがって、全般的にはほぼ計画通りに進んでいると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
環境要因がどのような経路を通じてタイマー機構に情報が伝わるか、また、新たなタイマー因子のスクリーニングを継続することにより、タイマー機構の全容の解明を目指す。また、CWとTGP決定へのFTZ-F1の役割の解明も目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
26年度に新たなスクリーニング開始したが、予定ほどの数をすることができず、27年度に継続することとしたため、その予算分を次年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
消耗品として約64.2万円、旅費として43万円を使用する計画である。
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