研究課題
基盤研究(C)
個体の発生において組織・器官が正しく形成されるには細胞間のコミュニケーションが重要である。Hippo経路は細胞間コミュニケーションを制御する中心的なシグナル経路であるが、その活性化機構には未だに不明な点が多い。私は、細胞接着関連分子であるAngiomotin (Amot) がHippo経路の中心的キナーゼであるLatsと相互作用することを見いだしており、両者が互いの活性をコントロールするという仮説を提唱している。本研究は細胞接着によるHippo経路活性化機構の解明を目的として、マウス着床前胚のAmotおよびLatsによるHippo経路による細胞分化制御について明らかにする。H25年度は、Hippo経路の中心的キナーゼであるLatsの着床前胚における局在と活性化状態についての解析を進めた。Lats1の局在は市販の抗体を用いた免疫染色、Lats2の局在はHAタグを付加したLats2を着床前胚に発現させ、HAタグの免疫染色によってタンパク局在を解析した。いずれの方法でも、接着結合での局在に加え、着床前胚の外側に位置する極性細胞の頂端側での局在が顕著に検出された。接着結合にはAmotタンパクも局在することから、細胞接着情報が接着結合で接着分子からAmot, Latsへと伝達されるという仮説が支持された。一方、着床前胚の細胞極性はAmotを頂端に引きつけると同時に接着結合から排除することでHippoシグナルを抑制するが、Latsも頂端に顕著に局在していた。本結果はAmotに加えLatsの局在も細胞極性によって制御されており、これが細胞極性によるHippoシグナル抑制の分子基盤であることを明らかにするものである。
2: おおむね順調に進展している
本年度は予定通り、Latsの局在と活性化状態の解析を主に行った。固定胚を用いた解析で当初に想定していた以上の研究の進展があった一方、Lats活性のライブイメージングのためのツールとして作製したFRETプローブは機能せず、今後の課題として残されている。したがって、総合的にはおおむね順調に進展しているといえる。
所属機関が熊本大学発生医学研究所から東京医科歯科大学実験動物センターに移ったが、動物実験施設を始め研究環境はよく整っており、本研究を遂行する上での支障はない。H26年度以降も研究実施計画に従い、これまでと同様のペースで研究を実施する。
所属が異動になった関係で年明けから年度末まで本研究を実施する時間を十分にとることができず、研究費に残額が生じた。残額の71,492円は、本来なら昨年度末に行う予定だった実験を行う際の物品費として使用する予定である。
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Tissue Barriers
巻: 2 ページ: e28127
Current Biology
巻: 23 ページ: 1181-1194
10.1016/j.cub.2013.05.014
http://www.imeg.kumamoto-u.ac.jp/topics/sasaki130626.html