研究課題
今年度の研究実施状況は次の通りである。a) ホヤのOtx遺伝子の転写調節機構:中枢神経系の前方の領域化に関わるOtx遺伝子は、発生を通して脳胞の系譜で連続的に発現する。マボヤ(Hr)とカタユウレイボヤ(Ci)のOtx遺伝子の脳胞細胞系譜での各発生段階でのエンハンサー、その活性に重要な転写因子結合部位をレポーター遺伝子GFPの mRNAの検出を指標として調べた。その結果、2種のホヤでエンハンサーはそれぞれ複数あること、それらの活性に重要な転写因子結合部位は時期特異的に変化すること、変化の仕方は2種のホヤで異なることを明らかにした(業績論文1,2)。b) カタユウレイボヤ(Ci)の消化管形成におけるHox10の役割:昨年度までに、Ciの消化管形成の概要、とくに消化管の後半部(腸)が幼生の尾部にある内胚葉索が変態の過程で胴部に移動・集積して形成されることを明らかにしてきた(Nakazawa et al., 2013)。一方、我々は、CiのHox10に対するアンチセンスモルフォリノオリゴ(CiHox10MO)により、幼若体で消化管後半部(腸)が欠失することを観察していた。今回、CiHox10MOにより、内胚葉索の細胞が尾部から胴部への移動が妨げられること、その結果内胚葉索の細胞は尾部とともに壊されて、腸が形成されなくなることを見出した(業績論文3:Kawai et al., 2015 印刷中)。c) マボヤのHox遺伝子クラスター構造:我々は、ホヤ綱を構成する二つの目のうち、カタユウレイボヤとは異なる目に属するマボヤでは、Ciと同じ9個のHox遺伝子が、Ciの場合とは異なって一つの染色体上にあることを見出してきた。現在、全9個のHox遺伝子の染色体上の並び順をFISHとBACライブラリーを用いた染色体歩行により明らかにしつつある(論文準備中)。
3: やや遅れている
今年度は、一緒に実験をすすめている院生が体調を崩すなどのトラブルが発生し、当初の計画通りには進めることができない部分(論文発表準備中のまま)が生じたため、上記の評価をしている。
トラブルは解消することができたので、研究計画に軽微な変更を加え、研究を実施していく。成果とりまとめを行う所存である。
平成26年度の予算を繰り越すことにした主な理由は次のようである。1)26年度の研究実施に遅れが出たため、27年度の研究実施に充当したいと考えた。2)水槽等で、これまで使用してきた機器に老朽化の兆候が顕在化し始め、対応する必要を考えた。
使用計画は次の通り:試薬類等物品費 1,648,919円 旅費(学会、研究試料調達) 200,000円 その他 200,000円
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)
Developmental Biology
巻: 403 ページ: 43-56
10.1016/j.ydbio.2015.03.018
Development, Growth & Differentiation
巻: 56 ページ: 189-198
10.1111/dgd.12118
Zoological Science
巻: 31 ページ: 565-572
10.2108/zs140060
http://www.biol.se.tmu.ac.jp/labo.asp?ID=devpro