研究課題
我々は、Hox遺伝子クラスターのホヤにおける崩壊の過程を明らかにするため、カタユウレイボヤ(以下Ci)と系統的に遠いマボヤ(Hr)のHox遺伝子およびクラスター構造について研究を行ってきた。Hr では9個の遺伝子が1つの染色体にあることを明らかにしている。今年度、より詳細にHox遺伝子の系統樹解析を行った結果、Hrの9個の遺伝子の内8個はCiのものと相同な遺伝子であること、残りの1個はCiのどのHox遺伝子とも系統樹上で挙動を共にすることのない遺伝子であるが、この遺伝子はHox遺伝子のパラロググループ(PG)6-8に属する遺伝子 (Hox6/8と呼ぶ)であることが示唆された。一方、従来Ci-Hox6と呼称されていた遺伝子は、PG6ではなくPG6-8に属することが示唆された。また、HrのHox遺伝子の染色体上での配置をCiのものと比較した結果、Hox1は他の遺伝子から離れた位置を占める、Hox2、3、4はその間に他の遺伝子が無く同じ転写方向で並ぶ、Hox12、13は互いに逆向きに隣接する等の共通点を見出した。各Hox遺伝子の周辺については、Hox2、3、4に隣接する遺伝子3個がHrとCiで共有される以外にはmicrosynthenyは見出されなかった。これらの観察から、HrとCiの最近共通祖先のHox遺伝子クラスターは系統上離れた2種のホヤの進化過程でmicrosynthenyがほとんど見られない程度にゲノムの再編を受けたこと、それにも拘わらずHrとCiのHox遺伝子の染色体上の配置にいくつかの共通点が見出されたことから、2種のホヤの進化におけるHox遺伝子クラスターの崩壊には、初期に共通するtranslocationやinversionの過程、その後に系譜独自のゲノム再編過程が含まれると考えられた(投稿準備中)。
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Proc Biol Sci. B
巻: 283 ページ: 1845
doi: 10.1098/rspb.2016.1712.