研究課題/領域番号 |
25440114
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
廣田 ゆき 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (00453548)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 大脳皮質 / リーリン / ApoER2 / VLDLR |
研究実績の概要 |
LDL受容体ファミリーに属するVLDLRとApoER2は、細胞外糖蛋白質リーリンをリガンドとして神経細胞の動態および大脳皮質の多層構造形成を制御するが、その作用機序には不明な点が多い。本研究では、層構造形成の最終ステップである、脳表層の辺縁帯への樹状突起伸長におけるVLDLRの機能に着目している。昨年度までにVLDLRが辺縁帯内の樹状突起に多く局在することと、タグを付けた外来性のVLDLRを発現させると、樹状突起の遠位側へ限局して局在することを明らかにした。本年度の解析では、VLDLRには複数のスプライシングバリアントフォームが存在し、O結合型糖鎖修飾部位を有するものと有しないものがあるが、糖鎖修飾部位を有するバリアントのみが辺縁帯内部の樹状突起の遠位部分へ局在することを見いだした。また、VLDLRをノックダウンすると、脳表層付近において樹状突起の形成が異常になり、細胞体の配置が深部へとシフトすることを見いだした。これらの結果は、VLDLRの翻訳後修飾と樹状突起への局在が大脳皮質形成過程に重要であることを示唆している。そこで現在はこれらの2種類のスプライシングバリアントフォームがVLDLRノックアウトマウスの表現型をレスキューできるかを調べるために、エレクトロポレーションによって胎生期脳にそれぞれを発現するプラスミドをGFP発現ベクターと共に導入し、GFP陽性細胞の移動パターンと形態に及ぼす影響を解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
VLDLRノックアウトマウスおよびノックダウンを用いたにおける辺縁帯での樹状突起形成の経時的な解析は概ね予定通り進行している。
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今後の研究の推進方策 |
VLDLRの2種類のスプライシングバリアントフォームがVLDLRノックアウトマウスの辺縁帯における表現型をレスキューできるかをエレクトロポレーションによる遺伝子導入によって解析中である。また最近、VLDLRにはGalNAc型のO糖鎖結合があることが報告された。応募者は胎生期脳におけるmRNA発現データベースを探索し、Galnt11を含む複数の糖鎖付加酵素が辺縁帯に発現することを見いだした。そこで、これら糖鎖付加酵素がVLDLRの糖鎖付加おに与える影響を検討する。神経細胞の初代培養および生体内にて、糖鎖付加酵素のノックダウンを行いVLDLRの糖鎖付加を調べるとともに、細胞形態と層形成を評価する。また最終的な層形成のためには、脳表面に到達した神経細胞は後続の細胞に追い越されて深層へ配置することが必要である。この過程に糖鎖修飾が必要か調べるために、連続子宮内エレクトロポレーションにより、胎生14日にGalnt11のノックダウンとGFP標識を行い、2日後にDsRed標識を行う。生後7日に脳を固定し、GFP陽性細胞とDsRed陽性細胞の位置関係を調べる事により、層形成への影響を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
出産に伴い研究を中断し、研究期間を延長したため。
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次年度使用額の使用計画 |
リーリン受容体VLDLRおよびApoER2の機能解析のための実験動物、試薬類及び研究成果の発表のための旅費等に使用する予定である。
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