毛の種類を決定する制御機構の解析

2013 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 25440115
• 研究種目: 基盤研究(C)
• 研究機関: 東京理科大学
• 研究代表者: 豊島 公栄 東京理科大学, 総合研究機構, 研究員 (00599243)
• 研究分担者: 辻 孝 東京理科大学, 総合研究機構, 教授 (50339131)
• 研究期間 (年度): 2013-04-01 – 2016-03-31
• キーワード: 運命決定 / 器官発生 / 毛包 / 毛乳頭 / 毛包幹細胞 / 毛種

研究概要

平成２５年度の研究は、研究実施計画に従って進捗し、下記の成果を得た。
１）毛種の異なる成体毛包上皮幹細胞と毛乳頭細胞の相互置換による毛種運命記憶細胞の解析
毛乳頭細胞が毛種運命記憶・維持を担い、毛種を決定するかどうかを解析するために、本年度は、まず器官原基法を応用して体毛の毛包間葉細胞を頬髭由来の培養毛乳頭細胞により置換する技術を用いて解析を進めた。可変領域を切除した体毛の不変領域に高密度化した頬髭由来の培養毛乳頭細胞を移植することにより、間葉置換した毛包が再生され、本研究課題の２）の定性的解析により、頬髭様の内部構造を有する毛種に転換することが明らかとなった。このことから毛種は、毛包間葉細胞により運命決定されている可能性が示唆された。
２）毛種の運命決定と維持の定性的・定量的評価系の開発
毛種は毛幹の内部構造、形態、サイズ、および物理的特性などにより分類される。また、毛周期のリズムは毛種に依存していることが知られている。本年度は、毛種特異的な毛幹の性状を明らかにするため、頬髭や体毛などの毛種ごとに毛髄・毛皮質といった内部構造および断面形状などの形態的な特徴について光学顕微鏡レベルで解析を進め、毛髄質の構造および断面形状に毛種特異的な特徴を有していることを明らかにした。さらに各毛種の毛周期について解析を行い、その周期性を定量的に明らかにした。これらの系の構築により、毛種の運命決定と維持について、定量的、また定性的に評価する系を開発した。

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究の年度計画に対して、研究課題１）「 毛種の異なる成体毛包上皮幹細胞と毛乳頭細胞の相互置換による毛種運命記憶細胞の解析」は順調に推移しており、器官原基法を応用した毛乳頭細胞の置換技術を用いて、頬髭に対する毛種転換実験を進める。研究課題２）「毛種の運命決定と維持の定性的・定量的評価系の開発」については、マウスの毛種特異的な遺伝子はほとんど知られておらず、また特定領域における遺伝子発現パターンを解析することからも困難な課題であり、今後も硬ケラチン類などの遺伝子発現解析を進める。

今後の研究の推進方策

今後の研究推進については、研究課題１）「毛種の異なる成体毛包上皮幹細胞と毛乳頭細胞の相互置換による毛種運命記憶細胞の解析」は平成２５年度の課題をほぼ遂行したことから、当初の研究計画に従い、平成２６年度は研究課題２）「毛種の運命決定と維持の定性的・定量的評価系の開発」を進める。さらに、毛乳頭細胞の置換技術の精度を向上し、さらに統計的に有意なデータを積み上げることにより、研究課題３）「再生毛包の発生プログラムにおける毛種決定と維持に関わる遺伝子発現の解析」を進めていく。