本研究は、砕片分離と再生による無性生殖を行うヤマトヒメミミズEnchytraeus japonensisにおいて、再生初期に再生芽先端付近および中胚葉系列幹細胞に発現する新規遺伝子grimpに着目し、タンパク質レベルでその性質と機能を明らかにすることを目的とする。また、grimpタンパク質と相互作用するタンパク質、およびgrimp遺伝子の影響下にある他の遺伝子との関係を調べ、再生開始機構および再生幹細胞の実態の解明を目指す。これまでに、RNAiによるgrimp遺伝子の発現抑制が再生を阻害することを明らかにしているが、さらに直接的にgrimpの再生における役割を証明するために、タンパク質レベルの機能解析を行う。 最終年度は、前年度に業務委託により作成したポリクローナル抗体(ウサギ)抗体(grimp遺伝子をHisタグ融合タンパク質に対する抗体および合成ペプチドに対する抗体)を用いて、タンパクレベルの局在(細胞の種類、細胞内局在)について検討した。ヤマトヒメミミズのホールマウント標本を用いた蛍光抗体染色により、いずれの抗体を用いた場合でも、grimpタンパク質が再生芽およびその周辺の中胚葉系細胞に局在することが示された。また、RNAレベルでは再生6-12時間で発現しそれ以降は消失するが、タンパク質レベルだと再生24時間でも発現が見られることがわかった。以上の結果より、grimpはタンパク質レベルでも発現し、アミノ酸翻訳の読み枠は予想通りであることが明らかになった。一方、ウェスタンブロッティングにより検討したところ、予想分子量付近に抗体と反応するタンパク質のバンドが認められた。また、より低分子のバンドも確認できたところから、タンパク質としてのプロセシングの有無について検討している。さらに、抗体や融合タンパク質を用いた再生機能阻害実験を行っている。
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