細胞が集まって器官の形がきまる。研究目的はいくつかの器官のキラル構造を、数理的細胞モデルを使って解明することである。トリやマウス初期胚の心臓形成時にはへリックスループ形成が見られる。これを研究対象とした。はじめは直線状のチューブであった心臓が(1)チューブの腹側で細胞増殖が頻繁に起こり、チューブが「く」の字型に屈曲することと (2)構成要素である細胞がキラルな行動、すなわち分裂時に2娘細胞が互いに逆時計回りに回転移動することでへリックスが形成されることがわかった。心臓のキラリティー発生の問題は、キラルな細胞行動が細胞自体のキラルな性質によるのか、それとも体内の非対称構造によるのかに絞られた。
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