研究課題/領域番号 |
25440118
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研究機関 | 大学共同利用機関法人情報・システム研究機構(新領域融合研究センター及びライフサイ |
研究代表者 |
和田 浩則 大学共同利用機関法人情報・システム研究機構(新領域融合研究センター及びライフサイ, 新領域融合研究センター, 融合プロジェクト特任研究員 (70322708)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 骨リモデリング / 骨芽細胞 / 破骨細胞 / 側線鱗 / ゼブラフィッシュ |
研究実績の概要 |
骨組織を正常に維持するためには、骨芽細胞による骨形成と破骨細胞による骨吸収のバランスを調節する必要がある(骨リモデリング)。骨リモデリングの異常は、骨粗鬆症などの重大な骨疾患を引き起こす。ゼブラフィッシュの側線鱗は、単純な構造を持ち、かつ骨形成・骨吸収過程を容易に観察できることから、骨リモデリング機構の解析のためのすぐれたモデルとなる。 昨年度は、骨芽細胞・破骨細胞で発現する遺伝子の単離と発現パターンの解析を行い、側線鱗の形成過程を記載した。また、破骨細胞に異常を示す突然変異体c-fmsでは、側線鱗の形成が阻害されることから、側線鱗の形成は、骨リモデリング過程によって生じるていることを示した。 本年度は、側線鱗の骨リモデリング過程がどのようなメカニズムで生じるのか調べた。(1)側線鱗を除去し、再生過程を観察した。はじめ通常の鱗が形成し、次に、側線鱗の管構造が生じる。この過程は正常発生と同じであった。(2)側線鱗を除去したあと、通常の鱗を移植すると、移植した鱗には、管構造が生じた。(3)側線鱗を除去するさい、神経組織(interneuromast cells)の除去を行った。神経組織がないと、側線鱗の管構造は生じなかった。以上の結果から、側線鱗の骨リモデリングには、神経組織が必要であることが示された。この成果を、論文として発表した(Wada et al (2014) Dev. Biol. 392: 1-14)。 鱗の形成には、表皮組織と真皮組織の相互作用が必要であると考えられている。しかし、どのようなシグナル分子が骨形成を制御しているのか分かっていない。表皮組織では分泌因子Shhが発現している。また、神経組織では、分泌因子Dkkが発現している。今後、これらの分子の機能解析を行い、骨リモデリングにおける組織間の相互作用の実体を明らかにする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
できた項目: (1)マーカー遺伝子の発現解析により、ゼブラフィッシュ側線鱗の形成過程を記載した。 (2)移植実験により、側線鱗の骨リモデリング過程が神経組織によって引き起こされることを明らかにした。 (3)これらの成果を論文として発表した(Wada et al (2014) Dev. Biol. 392: 1-14)。 できなかった項目: 遺伝子の機能解析をするために鱗の培養系の確立
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今後の研究の推進方策 |
当初から、遺伝子の機能解析をするために鱗の培養系の確立を目指しているが、うまくいっていない。その原因として(1)側線鱗の形成(再生)には、3~5日の比較的長い期間が必要なこと。(2)鱗には、表皮・真皮の他、毛細血管が走行しており、これらの組織が重要な役割をしていること、が考えられる。 今後、遺伝子機能解析の他の方法としてエレクトロポレーションによるプラスミド発現ベクターの導入を行う。表皮からのシグナル分子として、Shh pathway、真皮における骨形成シグナルとして、Bmp pathway、さらに、神経組織からのシグナル分子としてWnt pathwayの機能解析を検討している。 また、エンハンサートラップ系統のスクリーニングから、骨芽細胞でリポーター遺伝子を発現する系統を得ている。今後、この系統を用いて、鱗の発生過程・再生過程を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度末に共焦点レーザー顕微鏡用のコンピューターに不具合が生じ、その買い換え(50-60万円)を予定していた。しかし、その後、基盤の点検・清掃によって回復したため、その分の費用を次年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
共焦点レーザー顕微鏡用のコンピューターに再び問題が生じた場合に使用する。もし、問題が生じなければ、他の備品や消耗品の購入に当てる。
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