研究課題
(1) uORFペプチドが組織・条件特異的な翻訳制御に関与する可能性の検討これまでに同定したuORFペプチドにより制御されるシロイヌナズナ遺伝子のいくつかについて、組織特異的発現制御にuORFペプチドが関与する可能性を検討したところ、uORFペプチドによる翻訳抑制の強さに組織特異性がみられる遺伝子を一つ見いだした。また、シロイヌナズナの培養細胞を用いて、いくつかのuORFについてuORFペプチドによる翻訳抑制の強さと細胞増殖速度との関係を調べたところ、細胞増殖速度が通常よりも遅い条件でuORFペプチドによる翻訳抑制が強くなる遺伝子と弱くなる遺伝子を一つずつ見いだした。(2) uORFペプチドがリボソームの停滞を引き起こす可能性の検討ペプチド配列依存的に翻訳を抑制する7個のuORFについて、uORFペプチドがリボソームの停滞を引き起こす可能性を、小麦胚芽抽出液の試験管内翻訳系を用いたウエスタン解析により検討した。その結果、7個のうちの1つのuORFを翻訳させた場合に翻訳アレストが起きたことを示すバンドが検出された。他の6つのuORFを翻訳させた場合には翻訳アレストは観察されなかったため、それらのuORFにコードされるペプチドは通常の小麦胚芽抽出液の試験管内翻訳反応条件ではリボソームの停滞を引き起こさず、翻訳アレスト起こすためにはなんらかのエフェクター分子を必要とする可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
現在までに組織・条件特異的に遺伝子発現を抑制するuORFペプチドを3つ見いだした。その3つのuORFについて、uORFの翻訳開始効率とuORFペプチドによる翻訳抑制効率のいずれが組織・条件特異的に変化するかを検討するための形質転換植物の作出もほぼ完了している。また、試験管内翻訳系において翻訳アレストを起こすuORFを一つ同定した。以上のように、当初の目標としていた成果が得られており、順調に研究が進んでいると言うことができる。
前年度に同定した組織・条件特異的に遺伝子発現を抑制するuORFと翻訳アレストを起こすuORFについて、それらが関与する遺伝子発現制御機構のさらに詳細な解析を行う。組織・条件特異的に遺伝子発現を抑制するuORFについては、uORFの翻訳開始効率とuORFペプチドによる翻訳抑制効率のいずれが組織・条件特異的に変化するかを、形質転換植物を用いて検討する。試験管内翻訳系において翻訳アレストがみられたuORFについては、通常の試験管内翻訳反応の条件では翻訳アレスト効率が低かったため、なんらかの条件に依存して翻訳効率が高まる可能性を検討する。また、これらのuORFによる遺伝子発現制御機構に関与する因子の遺伝学的同定を行う。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 1件)
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