研究課題/領域番号 |
25440123
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 室蘭工業大学 |
研究代表者 |
金原 和江 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 客員准教授 (30587746)
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研究分担者 |
岩佐 達郎 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00133926)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | PLC / Arabidopsis |
研究概要 |
平成25年度は下記の3項目に関して検証することを計画し、それらを遂行した。 1)AtPLC2が根の発達に必須なPLC活性を担う主要な遺伝子であることを、薬理実験及び遺伝学的方法により示した。はじめにplc2植物体に根の発育欠損があることを明らかにした。次にAtPLC2が根の発達に必須なPLC活性を担う主要な遺伝子であることを検証するため、ProPLC2::PLC2を形質転換したplc2植物体を構築し、根の発育を観察した。その結果、PLC2を遺伝学的に相補した植物体では根の発育が回復した。さらに、plc2植物体にPLCの反応生成物であるIP3を添加したところ、根の発育欠損が相補された。これらのことから、根の発達におけるPLC活性の役割とPLC2の位置づけ、及びIP3の必須性が明らかになった。 2)AtPLC2が小胞体ストレス耐性に関与することを明らかにした。plc2植物体が、ツニカマイシンが誘起する小胞体ストレスに脆弱であることを明らかにした。これまでにシロイヌナズナの小胞体ストレス応答時に発現が著しく上昇するマーカー遺伝子が複数報告されているため、 BIP3を含む複数のマーカー遺伝子の発現をqRT-PCRによって調べたところ、plc2植物体では野生型と比べて、これらマーカー遺伝子の発現が上昇していることが明らかになった。 3)AtPLC2の組織及び細胞内局在を同定した。ProPLC2::PLC2-GUSとProPLC2::PLC2-Venusを発現する形質転換植物を構築して、AtPLC2の組織及び細胞内局在を詳細に観察することにより、PLC2の局在を同定した。ProPLC2::PLC2-Venus植物体を用いた実験により、AtPLC2は細胞質膜だけでなく、根毛細胞の小胞様構造体にも局在することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は上述の3項目に関して検証することを計画し、実際にその全てを遂行することができたため、順調に進展していると言える。特に、シロイヌナズナの根の発達におけるPLC活性の役割とPLC2の位置づけ、及びIP3の必須性を明らかにした点は意義深く、評価できると考える。
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今後の研究の推進方策 |
これまでのところ順調に進展している。2年目は、当初の計画どおり、1)小胞体ストレス及びGタンパク質シグナル伝達に関わるAtPLC2のシスエレメントの解析と2)AtPLC2とGβの相互作用の検証を行う。 1)小胞体ストレス及びGタンパク質シグナル伝達に関わるAtPLC2のシスエレメントの解析 野生型植物の小胞体ストレス応答時に、AtPLC2の発現が誘導されるか定量的なリアルタイムPCR法によって検証する。また、GTPγSの添加によりGαの活性型を維持した状態で、同じくAtPLC2の発現が誘導されるか検証する。同時にProPIPLC2::GUSを発現する形質転換植物体を用いて、上記反応に関わるシスエレメントの解析を行う。ほ乳類細胞のPLCβには、Gα及びGβγサブユニットが直接結合することが報告されている。AtPLC2のシスエレメントの候補を同定した際には、QCM (Quarts Crystal Microbalance;水晶発振子マイクロバランス測定法)を用いて、各種Gタンパク質サブユニットとの結合を検証する。 2)AtPLC2とGβの相互作用の検証 下記の2つの手法にて、AtPLC2とGβの相互作用について検証する:1) 酵母ツーハイブリットシステム 2) 精製タンパク質によるプルダウンアッセイ。シロイヌナズナの芽生えからcDNAを合成し、それを鋳型として大腸菌タンパク質発現ベクターにAtPLC2とGβをコードする遺伝子をクローニングする。大腸菌内及び精製タンパク質を用いて、両タンパク質の相互作用を検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費は、予定額の約10%の残高が生じたが、ほぼ計画どおりに使用した。旅費に関しては、複数回の研究打ち合わせを予定していたが、実際はその回数より少なかったのが原因で、次年度使用額が生じた。 物品費に関しては、次年度計画の実験試薬と消耗品の購入にあてる。旅費は、本年度の研究打ち合わせ及び、学会発表の参加費と交通費に使用する予定である。
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